Manga for Girls:NYタイムスの記事「少女マンガ」より。
9月19日付のNYタイムスに"Manga for Girls"(少女マンガ)という記事が掲載された。
昨日の記事に続いてまた少女マンガに関する記事。こんなに続いて「少女マンガ」関連の記事が出るということは、今やっぱりアメリカの出版業界では少女マンガが“ホット”なんだろう。前回のKyodo Americaの記事と違って今回の記事は少女マンガの内容("shonen-ai"少年愛)などについても触れている。(前回に続いてまたまたメチャクチャ長い要約。。。。コレからはモット短くします。)
ここ数年マンガはアメリカの男の子たちに人気があった。しかし今は少女向けマンガが出版業界をも驚かす最もホットなジャンルのひとつとなっている。関連商品全体で50億ドルと言われるアニメ業界に後押しされる形で、Viz MediaとTokyo Popの大手マンガ出版社では2002年以来売り上げを2倍に伸ばし、ニューヨークに本社を持つDel Reyは昨年16タイトルを出版し合計で100万部売った。来年は85タイトル発売する予定でその殆どが10代の少女向けである。
内容に問題あり??
親は子供が本を読んでいることに安心して内容にチェックを入れるのを怠っているかもしれないが、ベスト・セラーのマンガの中には女装する少年、性転換するキャラクター、兄妹の恋愛、10歳の少年に恋する10代の少女たちが登場し、その上美しい男性同士の恋愛を描く少年愛、ボーイズラブというサブジャンルも存在する。
少年愛は日本で人気のあるサブジャンルだが、面白いことにアメリカでも同じくらい人気があるようだ。アリゾナの或る図書館では、10代の女の子たちのリクエストが最も多かった作品が『フェイク』だった。しかしその図書館では最終巻の性描写のため『フェイク』の購入を断念。出版元のTokyo Popはその最終巻(第7巻)に「Mature for ages 18+」(18歳以上の成人向け)の指定をつけている。(第1巻は「Readers 13+」13歳以上。)
現在指定コードはそれぞれの出版社にまかされていて、統一されたレイティング・システムを推進し全体を管理する団体は存在しない。しかし前出の図書館がアメリカの100人の図書館員に対して行った調査では、今までのところマンガの内容に関する苦情は殆ど来ていないようである。それというのも大人がまだこのメディアの存在に気付いていないかららしい。(Viz Mediaの調査によると、アメリカの人口の40%以上がマンガのことをよく知らないという結果がでた。)
ゴールデン・ゲート大学で図書館員を勤め「Anime Companion(アニメの友)」の著者であるジルズ・ポイトラスは言う。「本の内容に目を光らせるタイプの人たちのレーダーにマンガはまだひっかかっていないようだ。でもこれから数年の間にはもっと風当たりが強くなるだろう」
インディアナで5年図書館員をしていたキャサリン・カーンが在任中に受けたマンガに対する苦情はたった1件だけ。お湯をかぶると女の子に変身する少年のヌードがその苦情の理由だった。マンガ出版社によると苦情は読者の親からでは無く、多くの場合、児童書専門店から来るということだ。
しかし少女マンガを置く事をためらう図書館や書店もある。Del Reyの副社長であるベッツィ・ミッチェルは、その少女マンガの性描写によっては出版するつもりはない、と言う。
アメリカで出版するためにマンガを部分的に削除した出版社もあるが、それはファンを怒らせるリスクを伴う行為だ。多くのファンがオリジナルの日本語版を買うか、ネット上でファンによる翻訳版("fanlations"と呼ばれている)を読んでいるので、英語版がオリジナルのままか確認できるのである。DC Comicsが『天上天下』の性的描写と暴力描写を一部削除した時ファンは激怒し、コミックスのコンベンションでこの会社のブース周りで抗議活動を行った。
マンガファン
昨年の総売上が1億2千5百万ドルだったマンガの読者のおよそ60%が女性である。そして特に熱心な購買層は12歳から17歳の少女だ。マンガのファンサイトや高校のマンガクラブの増殖を見ればファンの熱意は明らかである。
売上の数字はファンの数を十分には表してはいない。何故なら1冊のマンガが友達の間でまわし読みされるからだ。図書館員たちはマンガがすぐにぼろぼろになって読めなくなってしまうと苦情を言う。ブルックリン・パブリック図書館では予約リストの5冊に4冊は少女マンガで、『フルーツバスケット』はリストに90回も載ったということだ。
少女マンガは、読者がお気に入りのキャラクターのように着飾るという流行も生み出した。「ゴシック・ロリータ」と呼ばれるのはその中でも一番変わったスタイルで、この流行は少女マンガのカルトな人気をより押し上げることになった。
少年愛、ヤオイ人気
マンガのエキスパート、フレデリック・ショットは日本での少年愛、ヤオイ人気についてこう語った。「伝統的な日本の結婚には恋愛が欠けていて、最近まで一般に男女の付き合いも制限されていた。日本でマンガは“イドの解放”のようなものだ」
しかしそれなら何でもありのアメリカで、どうして同じように10代の少女たちが少年愛にはまっているのか?マンガファンのマサチューセッツの図書館員ロビン・ブレナーは説明する。「読者にとって安全だから。もし10代前半だったら特にね。読者は感情移入はできるけど、少年愛の物語の中には入れない。それで性的に自分たちが同じような事をしなければいけないと感じなくて済むの」
少年愛、ヤオイに現れる性的アイデンティティの変換は少女と女性の間を揺れる思春期の少女の気持ちを反映していると見る心理学者もいる。言い寄られて抵抗する男性キャラクターに読者は役割逆転のスリルを感じているのかもしれない。
20代以上の女性マンガファンの獲得
業界では現在少女マンガを読んでいる10代の少女たちが大学に入ってからもマンガを読み続けてくれることを期待している。CPMでは、大人の女性読者を維持する鍵として1年前にヤオイのレーベル“Be Beautiful”ラインを立ち上げた。このラインから発売された『KIZUNA』は一般書店での売れ行きが良く、読者の殆どが大人の女性で占められている。ニューヨークで開かれた『KIZUNA』の著者こだか和麻のサイン会には500人のファンが集まり男性はそのうちたった二人だった。
業界ではこの12月に発売されるハーレクイン・ロマンスのマンガ版が20代女性のどのように受け入れられるかも気になるところだ。これはハーレクインとDark Horseの合同プロジェクトで、マンガは13歳以上向けがピンク、10代後半以上向けが紫、と色分けして発売される。マンガ出版社にとっては年齢が高い読者の獲得を、ハーレクインにとっては若い読者の獲得を狙う試みである。