アニメと罪悪感:NYタイムスの『鉄人28号』紹介記事。

NYタイムスで過去アニメについて多くの記事を書き多くの米アニメファンを敵にまわしてきた*1チャールズ・ソロモン氏による『新・鉄人28号』DVD紹介記事"A New Mix: Anime and Guilt(NYタイムス・9月18日掲載)。

鉄人28号 1 [DVD]
第二次世界大戦中に行った恐ろしい実験に悩む一人の日本人科学者。この科学者は歴史上の人物では無い。アニメ『鉄人28号』の中の登場人物である。9月27日にアメリカでDVDが発売されたこの『鉄人28号』には、戦争中の研究に対する罪悪感に苛まれる3人の科学者が登場する。その研究とはそのうちの一人の言葉を借りれば「この世にもたらすべきではなかったもの」を生み出すものだった。

『鉄人28号』を販売するGeneon Entertainmentのジェイソン・アルナス氏によると「3人の科学者たちは全員“他に選択は無かった”と主張するが、戦争犯罪に関する意識がシリーズ全体を貫いている」

しかし物語は一人の科学者が無かったはずの選択をする事から始まる。戦争が終結に向かう頃、金田博士は巨大な機械兵士「鉄人」を作る仕事をまかされるとその研究所の場所をアメリカ軍に知らせ「鉄人」の破壊と自分の死を覚悟する。しかしその10年後、機械兵士は東京に現れ金田博士の息子・正太郎と博士の元弟子・敷島博士と対面した。少年探偵正太郎は父のライバル・不乱拳博士とも会うが、博士は自分の息子を含む多くの死体を使ってフランケンシュタインもどきの実験を重ねていた。不乱拳博士がマクベス夫人よろしく文字通り手から血を流すシーンもある。

アメリカでは『Gigantor』として知られる60年代の同名のアニメを元にして作られた今回の作品は、2004年に日本で放送された時驚くほど物議を醸さなかった。多分科学者たちの苦しみと東京大空襲が並べて提示されていたからだろう。

「今まで多くのアニメを見てきたが、戦争犯罪について触れたものは全くなかった」とアルナス氏は言う。「今まで作られてきた多くの映画で、日本人たちが言うのはこうだ。“確かに私たちはこの戦争で負けた。そしてその事に苦しめられてきた。でも私たちは再び立ち上がり前に向かって進んでいるのだ。” しかし『鉄人28号』は多くの人々が思い出したくない場所に視聴者を連れて行く。人生において前へ進む事は必要だが、過去を忘れない事も必要なのだ」

*1:管理人の印象です。