「ガール・ラブ・パワー:百合マンガ、アメリカ上陸」Publishing Weekly記事。
Publishing Weekly(10月25日)"Girl Love Power: Yuri Manga Comes to the U.S."より要約。
「やおい」もその市場参入当初成功が懸念されていたように、もう一つのマンガのサブ・カテゴリー「百合」もアメリカでの商業的成功が疑問視されている。
百合とは、二人の女性もしくは少女の間の恋愛やセックスを描いたマンガの事だ。少年どうしの愛を描き、少女たちに人気のあるやおいは一つのジャンルとなっているが、百合マンガは直接的、間接的に関わらず少女/女性同士の愛情が描かれる全てのジャンルを指すという意見もある。百合サイト Yuricon.org によると、日米双方で人気がある『美少女戦士セーラームーン』には一組のレズビアンのカップルが登場し、この作品は百合の一つと考えられている。
新しいマンガ出版社Go!Comiの編集長ジェイク・フォーブスはこの見方に反対する。「ファンは少女同士が愛情を交わしたりカップルになる事を『ウテナ』『セーラームーン』『カードキャプターさくら』のようなアニメ・マンガに期待しているが、これらの作品を百合と呼ぶのは拡大解釈だ」一方で、百合のコンセプトはTシャツのような商品の形でアメリカに基盤を作りつつあるが、実際のところその基盤を支えるはずの出版されたマンガが少ないのが現状だ。フォーブスの意見では、百合は少年たちからのやおいに対する反発という形で注目され、90年代に喧伝された“ガール・パワー”*1のように少女たちによって消費されている。フォーブス曰く、「百合マンガは小出版社から出版されているメインストリームでは無いジャンルなので、権利を買って出版できる作品がほとんど無い」
しかし、百合ファンにより運営されているサイト Lililicious.netによるとそれは正しくない。Lililicious.netでは、少女マンガのオリジナル日本語版、百合雑誌、同人誌をスキャンして英語に翻訳してサイトにのせている。(このような翻訳マンガは"scanlation"と呼ばれている。)現在までに、池田理代子の『クローディーヌ…!』を含め8作品の翻訳が終了し、池田の『ベルサイユのばら』など10作品、同人誌2冊、そしてアニメ2タイトルが翻訳中だ。翻訳予定リストには桜沢エリカ『Love Vibes』、有吉京子『アプローズ』などがのっている。
百合マンガ専門出版社 ALC Publishing は、取次ぎのDiamondと契約し2006年度冬から書店への同社の出版物を卸す契約を交わした。
ALC Publishingのエリカ・フリードマンは、大人の女性の視点で描かれた百合マンガを大人の女性読者に届けることに専心してきた。そのためALC のマンガははっきりとレズビアンの視点を持って描かれている。しかし、フリードマンはLililicious.netと接触し、同サイトが翻訳してきた日本のマンガのいくつかの権利を買うことを考えはじめた。蓼野 絵理子『Works』と高嶋りか『リカって感じ』は今年中に増刷される予定が入るなど、ALC Publishing が出版する日本人の百合マンガ家たちもアメリカで多くの読者を獲得してきている。日本の百合マンガ以外にも、ALC では、アメリカ人やヨーロッパ人の作家やマンガ家によるオリジナルの「Yuri Monogatari」というアンソロジー本も3巻まで出版していて、1巻は発売1年で完売、2巻は増刷中だ。
百合マンガが10代のやおいファンの少女たちを取り込めるかどうかは現時点ではわからないが、容易に特定できる読者層を持たないため、このカテゴリーの市場性については今だに議論が起こっている。「百合マンガの内容なら、男性、少女、女性、そしてレズビアンも読者として対象になる」こう語るのは、オーストラリアのマンガ家クィーニー・チャン。アメリカにこのまま定着すれば、百合マンガは、レズビアンの女性、やおいファンの少女、そしてレズのポルノに惹かれる男性というあり得ないような読者層を持つことになるかもしれない。
「どういう読者が百合マンガを気に入るのか僕にはわからない」ニューヨークでコミックス専門店「禁じられた惑星」を経営するジョー・ヒューズは言う。「でも、百合は売れるだろう。そして読者がつくだろう。多分他の人たちより成熟した少女たちや、急にマンガに興味を持ち出した男性にアピールすると思う」
ALCのフリードマンもこの意見に賛成だ。「男性は百合が好き。二人の女性がセックスするのを読みたい男性もいるけれど、二人の女性が恋に落ちるところを見たい男性もいるから」
↓Lililicious.netによって百合マンガとして紹介されている『一騎当千』英語版。
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