「少年ジャンプUSA」発行VizMedia副社長インタビュー(2)「マーケティング戦略」

VizMeidaの副社長リザ・コッポラ氏インタビューの要約第2回目「マーケティング戦略」。

ICv2 "Interview with Viz Media VP Liza Coppola: Part 2 The Viz Consumer, Manga Output and Frequency, Launch Strategy"より。

Vizマンガの読者層の性別構成はどうなっているか?

60%が女性で、40%が男性。サンディエゴのコミ・コンで、文字通り3世代の女性の『犬夜叉』ファンに会った。5歳の女の子とその母親と祖母。全員が『犬夜叉』のファンで、それぞれ別のキャラクターのコスプレで参加していた。しかし基本的に読者層は作品によって違う。

作品によって読者は男女どちらかに片寄っているか?それともだいたい読者の男女比は半々なのか?

男女の比率は殆どの作品で半々。極端に片寄りがあるような作品は無いと思う。ファンサービスのある作品には、男性読者が多い傾向がある。ただ驚くような例もある。『るろうに剣心』は少年向けと思われがちだが、実際読者の男女比は50:50だ。

現在一月に平均すると何点出版しているか?来年もそのペースで出版し続けるのか?

具体的な数はあげられないが、来年の出版点数は増える予定。小学館集英社を親会社に持つメリットは、常に素晴らしいコンテンツを持っているということだ。世界銀行と提携して「1 World Manga」*1も出版するし、『鋼の錬金術師』をマンガだけでなく、アート・ブックや小説で出版するように、マンガだけでなく様々な形で作品を送り出すことも考えている。

るろうに剣心』などで単行本の月刊化を試しているが、結果はどうか?

毎月1回発行は必要な実験だった。読者からは「すぐに読みたい。もっと早く出して欲しい」と言われ、書店からは「待ってくれ。棚に置くのにもうちょっと時間が欲しい」と言われ、板ばさみの状況だ。ただ今は発売に際して個々の作品に適切な時間をかけようと思っているため、正直に言うとこれから一つの作品の単行本を月刊で出していくことはないだろう。

つまり十分な時間売り場に出ていないと売上が下がると感じているのか?

十分な時間売り場に出ていないと難しいと思っている。Vizでは毎月沢山の作品を出版している。TokyoPopやDelReyなど他社も同様だ。『ナルト』『鋼の錬金術師』『るろうに剣心』『犬夜叉』などこんなに多くの人気作品を抱えている時には、市場にちゃんと出回るよう時間をかけることが大切だ。そして次の巻に行く前に目の前の巻を手に取る時間があるか見極めなければならない。どのくらいの時間をかけるのが良いのか誰にも正しい答えはわからないが。

様々な答えがあると思う。TokyoPopのマイク・カイリー氏はインタビューで「季節ごとに変える。ある季節では出版頻度を速めて、ある季節には延ばす」と言っていた。

それは面白いやり方だ。今私たちがやろうとしているのは、読者に出版頻度を覚えてもらうことだ。Vizのマンガは第2火曜日に出る、ということを覚えてもらえば読者はその時期に欲しいマンガを探しに出ることができる。そしてVizもスケジュールを守り発売日を変えたりしない。特に来年からSimon & Schuster*2がVizの販売を担当することになったので発売日を変更したりしないつもりだ。そして「ジャンプUSA」や「少女ビート」や「アニメリカ」で単行本発売の広告を出す。

アメリカでもテレビ番組、おもちゃ、コミックスなどを組み合わせメディアミックスで作品を売り出すことはあるが、Vizはより日本的なやり方を追求しているように見える。つまり、マンガ(雑誌または単行本)を最初に出版し、アニメを作り、それからキャラクター商品、というやり方だ。『ナルト』を例にあげると、Vizのキャラクター商品の発表はマンガとアニメの後で、来年発売のDVDの前だった。これは戦略なのか?

包括的な戦略だ。Vizが小プロ・エンターテイメント*3と合併した理由もここにある。色々なメディアでの相乗効果を得ることができるからだ。いつ、何を、どうやって発売するかを相談しメディアを横断したプロモーションを行うことができた結果、VizはMattelsや任天堂やカトゥーン・ネットワークと一緒に上手く仕事をすることができた。

現在Vizが目指しているのは、ホリディ・シーズンや新学期シーズン毎にライセンシーを惹きつける大きなプロジェクトを立ち上げることだ。以前はそれぞれの分野にそれぞれの責任者がいて、相乗効果を得るどころかコミュニケーションをはかるのも難しかった。今はプレス・リリースのタイミングなども含め全てが戦略的に行われている。これによって作品の寿命を長らえることができるだろう。

Vizは移動劇場バス*4を動かしたり、フィギュアを発売したりするなど『犬夜叉』の映画を強く後押ししていた。これがその大きなプロジェクトの一例なのか?

犬夜叉』映画は小プロとの合併の前だったが、同じチームとして仕事をすると上手く行くことがわかり実際に合併実現の大きなきっかけになった。

「少年ジャンプUSA」発行VizMedia副社長インタビュー(1)「少女向けアニメと少女マンガ雑誌」

*1:当ブログの関連エントリーアメリカ版ジャンプ発売元Viz Media、世界銀行と提携してマンガ製作。

*2:アメリカの出版会社。

*3:外市場で日本のアニメ事業を行っていたShoPro Entertainment Inc.のこと。

*4:当ブログ関連エントリー:『犬夜叉』移動型劇場、アメリカを走る。