「マンガはアメリカ市場の厄介もの?」NYコミックス・コンベンションでのパネリストたちの発言より。
ニューヨークで開かれた初の大規模なコミックス・コンベンションの様子がアニメ!アニメ!さんのサイトでも詳しくレポートされているが、業界サイトICv2が自分たちの主催したグラフィック・ノベルのパネル・ディスカッションの様子について「マンガは厄介もの 'Manga Is a Problem'(3月5日)」という記事で簡単にまとめている。
出版社、アーティスト、小売店、図書館員、業界のエージェントなど総勢125人が参加した複数のディスカッションでは、、グラフィックノベルの現在、その形態、そして未来について活発な議論が交わされたようだ。ICv2は記事の中で「同じ状況を分析しても人によって全く反対の結論に達することがある」とし、様々な意見を掲載している。
以下は発言の要約。
アル・カーン(4キッズ・エンターテイメント/CEO )マンガの未来についての発言。(マンガの未来についてかなり否定的な意見)
マンガは厄介ものだと思う。何故なら我々の文化は“読む文化”ではないからだ。今日子供たちは本を読まない。そしてどんどん読まなくなっている。どんな調査でも子供たちは昔よりTVやインターネットを見ている。その内容がたとえ良くできていても、“使い捨て”されている状態だ。わが社では多くの番組をネットで無料で配信している。それはまず子供たちになるべく多くの番組を見て気に入ってもらい、商品を買ってもらいたいからだ。商品は無料ではない。しかしコンテンツは無料になっていくだろう。私の考えでは、マンガはアメリカで場違いなことをやろうとしている感じだ。コンピューターやインターネット世代の子供たち、本を読まない子供たちの間では決してヒット商品にはならない。子供たちは今までも本を読まなかったし、これからも読まないからだ。
ダン・ブラウン(パンテオン・ブック/編集ディレクター)グラフィック・ノベルのこれからについて。(コミックス全般の未来についてかなり肯定的な意見)
コミックスのコマとコンピューターの画面との間に類似性を見出すことが可能だ。コマの小さな四角形の中には、コンピューターと同様の言葉と絵の相互作用を見ることができる。コンピューター世代は画面の見方、読み方をよく知っているので、その世代にとってコミックスは自然なもの。そしてコミックスは世界的言語だ。デンマークの諷刺画に関する騒動を見てもわかるように、コミックスには他のメディアに無い力がある。コミックスの未来はとても明るいが、同時にその力ゆえの怖ろしさも秘めている。
ジム・キレン(バーンズ&ノーブル/グラフィック・ノベル部門バイヤー)グラフィック・ノベルの市場拡大について。
「グラフィック・ノベルではどんなストーリーも語ることができる」と人々が気づいた、という地点にようやく我々はたどりついた。
トモコ・スガ(講談社・海外版権部門/シニアマネージャー)日本の出版社からの視点でグラフィック・ノベルの未来について。
日本の出版社にとって大きな問題は、グラフィック・ノベルが一般の読者まで届くかどうかということである。
カルヴィン・リード(パブリッシャーズ・ウィークリー/シニア・エディター)業界の現在の状況について。
引用した記事からは前後の発言がわからないのだが、以下のコメントでカルヴィン・リードは「グラフィック・ノベルは現在伝統的な文学のようになってきている」ということが言いたいんだと思う。(間違っていたら、指摘お願いします。)
もし新しいコミックス文学というべきものがあるのなら(そしてグラフィック・ノベルがそれならば)、その新しい文学は古い伝統的な私たちがよく知っている文学のように見えるだろう。多様性があり、すぐに手に入れることができ、子供たちのため、男性のため、女性のための作品があり、そして常にたくさんの本が出版される、そういう文学だ。