「アメリカで2次創作物に未来はあるか?」続報。
以前このブログで「大手アニメ・コンベンションOTAKONが、2次創作物販売を禁止する?」という噂から巻き起こった騒動について「アメリカで2次創作物に未来はあるか?」(2月3日)と題してお伝えした。
OTAKONでは現在「アーティスト・アレイ」*1での販売についてのOTAKONの意見と立場、そしてそこで売買が可能なものについて詳細なルールをHPに掲載している。
掲載された詳細については、当初ファンが恐れていたような「2次創作物全面禁止」や「厳しい制限」はなく、アニメファンの感想としては「納得がいく」「思ったほど厳しくない」ものだったようだ。OTAKONでは、ルールに質問や疑問があった場合、OTAKON本部だけでなく、ワシントンの日本知的財産権協会のミスター・キムラに問い合わせるよう提案し電話番号も載せている。
OTAKONの意見、立場などの詳細はかなり長いので細かく訳すのはやめておくが、とりあえず「アーティスト・アレイ」で「許されているもの・いないもの、そしてその理由」の項目だけ訳してみる。
- オリジナルとは違う形式や背景で描かれた版権を持つキャラクター。
例:超リアリスティックならんまとあかね
→許される。版権物キャラクター違反は一般にオリジナルとのはっきりした視覚的相似にのみ適応され、この種類の変更はパロディと考えられる可能性がある。しかし、著作権に違反していないかどうかの判断は最終的には自分の作品を売るアーティストにある。
- 版権をもつキャラクターを使ったフィギュア、アクセサリーなどあらゆる種類の手作りのもの。
例:ファイティング・ポーズのらんまフィギュア。キャラ絵付きイヤリングや、刺繍付き帽子
→大量生産品でなく既存の商品をコピーしたものでない限りにおいて、許される。(版権所有者を怒らせることは少ないと思われるため。)
- 同人誌・ファンジン
特に販売している本人が製作者の場合、限られた数の販売は許される。しかしその印刷物が公式に認められたり、ライセンスを与えられたりすることは決してない。もし許可されて大量にその印刷物を売ることになったとしたら、その販売者はアーティスト・アレイではなく、ビジネスのためのディーラーズ・ルームにいることになるだろう。
- コンで依頼されてのスケッチ。
例:頼まれてダーティー・ペアを描いたり、剣心の服を着た依頼人を書いたりする。
→許される。こういう行為はとても個人的なもので、版権商品と競合する可能性は低い。利用して儲けようという意図はないとみなされる。
- はっきりと認識されるキャラクターを使った手作り人形。
例:アニメのキャラクターの格好をしたティディ・ベア。
→認可されている商品と競合しない限りにおいて、許される。犬夜叉人形は権利を買った業者によって売られている。そのため同じものを勝手に作って売ってはいけない。しかし手作りの犬夜叉ぬいぐるみは、多分問題ないだろう。
- 版権をもつキャラクターに似た絵のついたボタン、ピン、帽子、Tシャツ。
→直接にライセンスを持った商品と競合し、権利所有者の権利を害すると思われるため、許されない。衣類やアクセサリー類はたいてい権利を持っている業者が既にいる。(もし自分が権利を持っていたり、権利を使うことが特に許されている場合は問題ない。)
→許されない。
- はっきりとパロディーとわかる版権をもつキャラクターの使用。
例:子連れ狼が息子が悟空だと気づくシーン。
→許される。
- 版権をもつキャラクターのオリジナル原稿からの大量生産コピー。
→許されない。(元の一品もののオリジナルの売買は許されるが、コピーは許されない。)
このガイドラインの前に一般ルールとして掲載されたのは以下の通り。
いかなるときでも、法的に権利を所有している者や、オリジナルを製作したアーティストが彼らの権利保有物を使用したものの売買を止めるよう依頼することができる。その場合、販売者は必ず反論することなく速やかにその依頼に従わなくてはならない。
このルールは日本のコミケよりは多少厳しいかもしれないが、それでも著作権に対して厳しいアメリカでは妥当(むしろ、寛容?)というところだろう。
今回のOTAKONの「アーティスト・アレイ」ルールの件がこれほど向こうのファンの間で話題になったのも、ファンの作る「2次創作物」に対する関心の高まりの大きさが第一にあると思う。そのことを端的にあらわしている記事はこちら。
ANIME CON.COMの記事"Artists stampede through Anime Boston's artists' alley"(3月4日)で伝えることによると、大手アニメ・コンベンションの一つ「アニメ・ボストン2006」では、84用意されたアーティスト・アレイのスペースが発売開始からたった5分25秒で売り切れた、ということである。昨年は45分で売り切れたので、今年は1.5倍に増やしての対応だったが、来年はさらなる検討が必要になるだろう。