ヨーロッパのアニメ・マンガ人気:東京国際アニメフェアのシンポジウムより。

東京国際アニメフェア東京ビッグサイトで開催されたが、そこで23日「進化する欧米のアニメ市場と日本企業の戦略」と題するシンポジウムが開かれた。全体のレポートはアニメ!アニメ!さんの「進化する欧米のアニメ市場と日本企業の戦略:レポート(3/24)」を見ていただくとして、ここでは、ちょっとだけヨーロッパのアニメ・マンガの動向に取り上げたいと思う。

とは言え、管理人のceenaはヨーロッパ圏の情報には疎いし、ここは「北米からのアニメ・マンガニュース」が主題のブログなので、上のシンポジウムのおさらいぐらいの軽い情報だけ。

<アニメ>
まずアニメから見ると、全体に今までは就学前児童向け日本アニメの人気が高かったが、高齢化の問題で放送枠が減少しているようだ。しかし一方でケーブルチャンネルの増加などから、高い年齢層に向けてのアニメがクローズアップされてきている。

ジェトロ・パリセンターの豊永真美氏の報告によると、その変化が明らかなのが2004年から2005年にかけてで、2004年までは80年代の一般的に子供向けと思われる日本アニメが多く放送されていたが、2005年になると「10歳以下視聴禁止マーク」のついた、中学生から上の男の子を対象のアニメとして『鋼の錬金術師』などが放送されるようになったということだ。

<マンガ>
上のアニメ!アニメ!さんのレポートにあるように、その市場規模の拡大が顕著なのはアニメよりもマンガのようだ。フランスの年間の日本マンガ翻訳タイトルが90年代には20ぐらいだったのが、2003年には521、2004年には754、そして2005年には1141となっている。2004年の日本マンガ年間総売上数は1000万部を超え、53億円の市場とのことだ。

このような出版点数の増加の背景には、それまで中小出版社が販売していたマンガ市場に2004年ごろから大手が参入したこともあるようである。

2005年に入ってから現在までにフランスで売上の上位に来ているのは、『ナルト』『銃夢Last Order』『フルーツバスケット』 『遊戯王』『鋼の錬金術師』。

このような日本マンガの躍進はフランスなどでは脅威と受け取られているようだ。フランスのマンガ界が日本マンガを脅威と感じている例として、ジェトロの豊永氏が挙げたのが『アステリクス』。1959年以来40年以上続き、世界中で3億1千万部売り上げた人気コミックスだ。

↓『アステリクス』コミックス。

Asterix and The Falling Sky (The Adventures of Asterix)

Asterix and The Falling Sky (The Adventures of Asterix)

↑上に取り上げたのは『アステリクス』33巻。主人公が退治する外宇宙から来たバッタ状の怪物の名が「Nagma」。「manga マンガ」のアナグラムである。つまりアステリクスに退治されるNagmaはヨーロッパ市場に侵入してきた日本産マンガの脅威を暗に表現したもの、ということらしい。

この『アステリクス』の「マンガ退治」は去年の10月Bloombergの記事「アジアのコミックスの侵攻に報復するアステリクス」でも取り上げられている。この記事によると、最初アステリクスが退治したのは「Tadsylwine」で、こちらは「ウォルト・ディズニー」のアナグラムだ。

フランスで開かれたコミックス・コンベンションの運営者は、『アステリクス』とマンガでは購買層が異なるため、競合してどちらかが衰退することは無いだろうと推測している。

更に記事では、2004年フランスのコミックス市場の5分の1がマンガであり、ドイツでも『アステリクス』を販売するエグモント社がたった6年前にマンガを売り出し始めたにもかかわらず、マンガは既に同社のドイツでのコミックス売上の70%に達したということを伝えている。その人気は衰える様子を見せないため、エグモント社ではドイツ出身のアーティストによるマンガスタイルのコミックスを売り出し始めたということだ。


・・・東京国際アニメフェアのシンポジウムの内容からは少しはずれてしまったが、以上がおおざっぱなヨーロッパのアニメ・マンガ事情。ただ上のBloombergの記事で気になるのは、「少女マンガ」がマンガ人気の要因とし、そのすぐ後で「少女のヒロインが出てくるマンガが好き」という女の子を登場させ、その女の子の好きなマンガが『犬夜叉』というところ。

別に間違った情報は何一つ入っていないのだが、コレだと『犬夜叉』が「少女マンガ」だと誤解されてしまうのでは?と、重箱の隅をほじくるような感想を持ってしまった。