米大手マンガ出版社トーキョーポップ、ライトノベルに進出。
アメリカ大手マンガ出版社TokyoPopが若い世代向けの小説部門を立ち上げることになったようだ。Vizと並んで北米でのマンガ人気を牽引するTokyoPopは、近年様々な革新的な戦略を駆使してマンガの普及に一役買っている、目が離せない出版社の一つ。
アメリカ産オリジナルのマンガを続々と発売*1、一流新聞でマンガを連載*2、10代の少女向けファッション誌でオリジナルマンガ連載*3、携帯でのマンガの配信*4、そして最近では大手出版社ハーパーコリンズと流通その他を含めた契約を発表*5、アメリカ人作家による若者向け小説を原作とした米産マンガの発売を決めるなど、積極的に新たな分野へ進出している。
以前からTokyoPopではマンガ・アニメを原作としたノベライズ小説を発売して、予想以上の売上をあげていた。そして、そのTokyoPopが昨日付けで発表したのが、日本のライトノベルを含む若者向け小説部門の設立だ。「ポップ・フィクション」と名づけられたヤングアダルト向け小説第一弾は、時雨沢恵一氏の『キノの旅 - The Beautiful World -』、榊一郎氏『スクラップド・プリンセス』、深沢美潮氏『デュアン・サーク』*6。
PublishersWeekly の記事「トーキョーポップがティーン向け小説部門を設立("Tokyopop Launches Teen Prose Line")」(5月1日)より要約↓。
マンガ出版社TokyoPopは、今秋に「ポップ・フィクション」を立ち上げる。これはオリジナル、または海外からの小説を扱う部門で、マンガやコミックスを超えて、書店のヤング・アダルト向け小説コーナーにその守備範囲を広げることが狙いだ。その部門で発売する本は挿絵付き、ジャンルはファンタジーからサイコ・スリラーまで広い範囲に及ぶ。
10月に最初の3冊を発売予定にしていて、そのうちの2冊が日本、1冊がドイツの小説である。「ポップ・フィクション」の発案者である編集主任ニコル・モナスタースキーによると、3冊ともパルプ的な面白さを持った小説で、人生の煩雑さを扱っているという。TokyoPopでは、マンガを原作とした小説を既に発売しているが、「ポップ・フィクション」はヤング・アダルト小説市場への過去最大の挑戦となる。
今年はTokyoPopにとって変革の年だった。1月にシニア・エグゼクティブと6人の従業員の解雇、続いて話題になったのが、ハーパーコリンズと流通と共同出版事業に関する契約だ。TokyoPopは「ポップ・フィクション」が、ハーパーコリンズと契約を結ぶ要因の一つだったことを強調した。
「TokyoPopからの10代向け小説です」TokyoPopの発行人マイク・カイリーは言う。そしてハーパーコリンズとの契約と今回の新部門との関係をこう説明する。「私たちにはマンガというジャンルを超えた作品があるとわかっていました。それで、非伝統的な分野で協力してくれるパートナーを探していたんです」
モナスタースキーは「ポップ・フィクション」の第1冊目『キノの旅』について「不完全なものに内在する美しさについての物語」と語った。人間は欠点だらけ。でもそれ故に美しいこともある。「ポップ・フィクション」からは、他にも同様なテーマを持った作品が発売され、最初のオリジナル作品は2007年初頭発売を予定している。1巻で完結するものもあるが、殆どの作品がシリーズもの。価格は1冊あたり7.99ドルから11.99ドル(現在のレートで約900円から1400円)。
オンラインで情報を発信し宣伝するため、TokyoPopはBookreporter.comと契約した。Bookreporter.comのCEOキャロル・フィッツフェラルドによると、6月から7月にかけてサイト内の「ティーン・リード」のコーナーで読書推進プログラムを行う。コーナーではレビューを書いてくれた10代に、TokyoPop「ポップ・フィクション」の本を賞品として与える企画を予定中。
キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))
- 作者: 時雨沢恵一,黒星紅白
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*1:アメリカ産オリジナルのマンガ:当ブログ「米業界サイト選出「2005年度 マンガ・オブ・ザ・イヤー」の「マンガの事件・オブ・ザ・イヤー(1)→ 非日本産マンガの急増」参照。
*2:新聞でマンガ連載:当ブログ「アメリカ高級新聞5誌、アメリカ産マンガ連載を決定。」参照。
*3:ファッション誌でマンガ連載:「CosmoGIRL」のマンガページ。
*4:携帯でマンガ配信:アニメ!アニメ!さん「Tokyopop 米国でマンガの携帯配信開始(3/30)」参照。
*5:ハーパーコリンズとTokyoPopの契約:PublishersWeekly「HarperCollins, Tokyopop Ink Manga Deal」、ICv2「Tokyopop Signs Alliance with HarperCollins:For Co-Publishing and Distribution」参照。
*6:追記:ICv2の記事「トーキョーポップがヤングアダルト部門立ち上げ」(5月2日)でも、今回の件を取り上げていたが、第一弾として出版されるのが、こちらの記事では4冊となっていた。そのうち1冊は世界で200万部以上を売上げ、20カ国以上の言語に翻訳されたドイツ産ファンタジー『Magic Moon』。残りの3冊が日本の小説で、『キノの旅』以外では『スクラップドプリンセス』(榊一郎)、『デュアン・サーク』(深沢美潮)。