「アニメ・エキスポ」マンガ出版社の動向。

世界最大のコミックスの祭典「サンディエゴ・コミコン・インターナショナル」が開かれるのを目前に控えて、ちょっと今更ですが、今月初頭に行われた「第15回アニメ・エキスポ」のマンガ出版社関係のまとめ。

PublishersWeeklyの記事"Anime Expo Keeps Manga in Focus"が「アニメ・エキスポ」でのマンガ出版社ごとのパネルの状況を簡単にまとめていたのでそれを要約する。

個人的に目が行くのは全体的に新しく「ノベル部門」を立ち上げる会社が多いところ。それからDel Reyが『Shonen Jump』のようなマンガ雑誌発売?というのも気になる。

あ、それからわたしがファンのアメリカン・マンガ家さんがTokyopopのブースに登場していたらしい。ちょっと見たかったなぁ。

コスプレ、アニメの上映会、ゲーム、Jポップのアーティストによるコンサート、加えて新人タレントコンテンスト「アニメ・エキスポ・アイドル」など、「アニメ・エキスポ」のメインはもちろんアニメ。しかし、ここ数年マンガの存在感はどんどん増して、マンガ編集者、出版社、マンガ家を見るのはファンにとってコンベンションの大きな魅力となった。

今年「アニメ・エキスポ」の中で最も待ち望まれていたイベントはCLAMPの登場だろう。表に出ることの少ないスーパースターマンガ家集団CLAMPを見るために、会場を6千人のファンが埋め尽くした。CLAMPは今回がアメリカのコンへの初参加である*1CLAMPの参加した会見は3時間にも及び、その後サイン会に参加したファンのための抽選会も行われた。

「アニメ・エキスポ」のチーフ・ファイナンシャル・オフィサーのトゥルリー・カラハシ氏によると、マンガは女性参加者の増加に大きく貢献しているという。「売上は伸び、女性読者が増えています。女性は忠実な読者であり、長く買い続けてくれます。マンガは子供の、特に少女の読書習慣を評価し直すきっかけとなりました」

展示会場には10を超えるマンガ出版社が参加した。企業はマンガに限らず、アニメや小説などにまたがる自分たちのブランド知名度を上げるためコンを活用する。

<Viz>
↓Vizによる主な発表。

  • Vizの扱う作品を基にした実写映画の部門、「Viz Pictures」の立ち上げ。
  • 1周年を迎えた10代後半向け少女マンガ月刊誌『Shojo Beat』は、今後カラーページやミュージシャンのインタビューのためのページを増やす予定。
  • 『Shojo Beat』レーベルでノベル部門を立ち上げ。最初の作品は『いま、会いにゆきます』になる予定。
  • 『Shonen Jump』レーベルでもイラスト付きノベルを出版予定。『ナルト』ノベルも発売。
  • 「Viz Signature」と「Viz Media」という二つのレーベルの立ち上げ。前者は『ゴルゴ13』や『漂流教室』を、後者はより広い読者層を狙ったマンガを出版する。

うえきの法則』のライセンスが発表されるとファンから喚声が起こった。Vizではより古典的な手塚治虫作品のようなマンガを出版することを計画しているが、日本で発売されたばかりの作品のスキャンレーション(ネット上のファンによる翻訳)のファンが多いアメリカ市場で、古い作品を売ることはかなり大変なことになるだろう。

<Del Rey>

Del Reyマンガ・ディレクターのダラス・ミドォー氏とライセンス&出版ディレクターのミツミ・ミヤザキ氏によると、

  • 一般書店でマンガ人気は上昇し続けている。
  • Del Reyでは少女マンガ版『電車男』を発売。(『電車男』別バージョンがVizやCMXでも発売される。)
  • Del Reyのマンガは年齢層がTokyopopやVizより高めである。
  • Del Reyはライセンスを取得したマンガの内容を検閲して手を加えたりはしないが、もともと極端な内容の作品のライセンスは買わない。
  • マンガを原作としたノベルの発売。
  • オリジナルのマンガの出版。
  • Vizの『Shonen Jump』のような雑誌の創刊を計画している。

<Dark Horse>
エディターのカール・ホーン氏によると、

  • Dark Horseは、内容が大人向けと判断した場合、検閲して手を加えたりレイティングをつけたりはせず、ビニールで包み定価販売する。
  • 『サムライ・チャンプルー』『だめだめ斉藤日記』(斉藤友之)発売。

Dark Horseはアメリカで最も古いマンガ出版社の一つだが、今回アニメ・エキスポに出展しのは初めて。反転して印刷されたページやサムライを扱った作品を見てもその歴史が感じられる。

<CMX>
初めての「アニメ・エキスポ」出展となったCMXは『電車男』の発売を発表。

エディターのジム・チャドウィック氏、ディレクターのアサコ・スズキ氏、Wildstorm*2のハンク・カナルズ氏は、「アニメ・エキスポ」ではサンディエゴのコミコンと違ってDCコミックの傘下にあることが認知度の高さにはつながらないと語った。

アメリカ産ウエブマンガとして知られる『メガトーキョー』のファンが多くブースにやってきていたが、実際多くのファンがCMXがDCコミックの一部だと知って驚いていた。

Tokyopop
Tokyopopによる主な発表。

  • 10代後半向けのノベル部門Pop Fictionの立ち上げ。『トリニティ・ブラッド』『十二国記』などが最初の出版作品に含まれる。
  • 13歳未満の子供を対象に、一般書店の子供向けセクションに置かれるようにデザインされた新しいレーベル「Manga Chapters」(イラスト付きノベル)、「Manga Readers」(短編マンガシリーズ)の立ち上げ。
  • 既に発表していた、ジム・ヘンソンのプロダクションと協力する『Labyrinth』『Mirrormask』『Dark Crystal』マンガを2007年発売。
  • 以前ADV Mangaがライセンスを所有していた『タクティクス』『新撰組異聞ピースメーカー PEACE MAKER 』『アクア』も発売。

Tokyopopでは多くのオリジナル作品のマンガ家をアニメ・エキスポに連れてきた。『Zapt!』のアーマンド・ヴィラバード氏、『MBQ』のフェリペ・スミス氏、『Sorcerers and Secretariese』のエミー・キム・ガンター氏など。エディターのリリアン・M・ディアズ-パズビル氏によると、オリジナルのマンガ*3は日本のマンガのようにスキャンレーションによって話題になったりファンがついたりすることがないので、宣伝が重要になる。そしてTokyopopの開く新人コンテスト「ライジング・スターズ・オブ・マンガ」は新しい才能を見つける場として同じように重要ということだ。

<ADV>

大手アニメ製作・販売会社ADVの販売マネジャーのクリス・オール氏は、ADVの販売の3分の2がアニメで、残りがマンガだと語った。一時はそのマンガ部門を縮小したものの最近はまた少し広げている。しかしこれからも少ない作品に絞って発売を続けるようだ。オール氏は例としてダークな作品『アンネ・フリークス』を挙げた。

Digital Manga
『バンパイアハンターD』を原作とするマンガの発売を発表。

Bandai Manga>
マンガサイズの『ウィッチブレード』(米出版社TopCowから発売されたシリーズ)を出版。

<Seven Seas Entertainment>
ノベル部門の立ち上げ。『しにがみのバラッド。』(ハセガワケイスケ)が第一号の出版となる。

*1:CLAMPのアニメ・コン初参加:アニメ!アニメ!さんの「AXを揺るがした大物ゲスト CLAMP」CLAMPの会見の詳しい様子が掲載されています。

*2:訳者註:Wildstorm:DCコミック傘下の会社で、Wildstormとしてのレーベルでコミックスを出している。

*3:訳者註:オリジナルのマンガ:Tokyopopは「オリジナル・グローバル・マンガ」としてOGMと呼んでいる。