英語であのセリフはどうなってる?英語版『真月譚・月姫』マンガ1巻。
最近『月姫』マンガの英語版1巻をいただいたので、久々に「英語であのセリフはどうなってる?」を書いてみようと思う。
英語版『真月譚・月姫』はDR MASTER社からの出版で、推奨年齢は「15歳以上」。
さて、まずなんと言っても気になるのはあの「直死の魔眼」は英語でどういっているか?
直死の魔眼
↓
The eyes of death perception.
「perception」は「知覚、認知、認識」なので直訳すると「死認識の眼」ということになる。なるほど。
「“魔眼”の“魔”の部分が抜けてるよ!」っていう意見もあるかもしれない。でも自分は翻訳の仕事をするのでよくわかるのだが、こういう造語の翻訳はほんっとぅーに難しい。
どう難しいかをちょっと例を出して説明してみよう。メディアワークスから出版されているオリジナル日本版1巻156ページで志貴が「直死の魔眼…?」とアルクェイドが言った言葉を繰り返すコマがある。そしてすぐ次のページ(157ページ)でアルクェイドが「直死の魔眼」の説明として「外的要因も魔術的要因も無視して対象を殺すことができる」というセリフを喋る。
このセリフは英語で、
外的要因も魔術的要因も無視して対象を殺すことができる
You can kill anything regardless of external factors or magical factors.
もし仮に「魔眼」の「魔」を表すのに一番良い単語は「magical」だと考えたとして、「魔眼」を「magical eyes」としていたら、その直後の「魔術的要因」の「magical factors」という言葉の登場で、「magical」という同じ単語が間をあまりおかずに使われることになる。別にそうなっても構わないという考え方もあるが、「魔眼」の“魔”と「魔術的要因」の“魔術”には同じ字が使われていても別のニュアンスの言葉なので、色々な単語を検討した結果、英語にはそのニュアンスの差異を表すことができる単語が無いと考えた場合は、翻訳者が敢えて「魔眼」の“魔”を取るという選択も考えられる。
もちろん「魔」には「magical」よりも「evil」などの方が良いとか、他にもっとふさわしい言葉があると感じる人もいるかもしれないが、この英語版の翻訳者の方はこう考えた可能性もある、ということ。
ということで、次のセリフ。
アルクェイド Alqueid (メディアワークス刊『真月譚・月姫』1巻・72-4ページ)
こんにちは、昨日はお世話になったわね。
あら、もう忘れちゃったの?昨日わたしを…
ナイフでこれでもかってくらいに
バラバラにしてくれたじゃない?Hello, thank you for yesterday.
Oh, have you forgotten already?Yesterday, you...
chopped me up into pieces,
with a knife, didn't you?
「chop」は「切り刻む、みじん切りにする」という意味。「玉葱をみじん切りにする」という時も「chop onions」になる。
「piece」は「断片、一片」などが意味があって、「into pieces(複数形)」で「細切れに」という感じ。「cut」や「break」と組み合わせて「cut 〜 into pieces」「 break 〜 into pieces」でも使える。
日本語セリフの「ナイフで」のところの「knife」の前置詞は「with」。道具を使って何かをする時や、物を(手で)扱う時には「with」が使われることが多い。
オリジナルにはある「これでもかってくらい」を敢えて英語のセリフの中に探すとすると「up」。「chop」だけでも「刻む」という意味になるが「up」で強調されるので「あますところなく(切り刻んだ)」とか「(バラバラに)たたっきる」という風に意味が強くなる。
最後に、士貴とアルクェイドのかわいい(?)やりとりから。
士貴&アルクェイド Shiki & Alqueid(メディアワークス刊『真月譚・月姫』1巻・143ページ)
おまえさ…
なあに 士貴?
吸血鬼の中でもバカの部類に入るだろう?
え!?なんでー
You know...
What is it, Shiki?
You're are of the dumber type in the vampire category, aren't you?
Huh!? Why?
「おまえさ…」が「You know...」になっているが、この場合のような時は「You know」には「知ってる、わかってる」という意味はない。「あのさ…」とか「えーっと」とか、そういう感じ。10代のアメリカ人と話すとこの「you know」とか「like」が本当によく出てくる。
「dumber」は「dumb = バカ、マヌケ」の比較級。ジム・キャリーの主演映画『Mrダマー』と同じでこの映画の原題は『Dumb and Dumber』。直訳すると「バカ&もっとバカ」。
「You're are of the dumber type 」の「of」は人間(この場合は吸血鬼ですが)について使うと「出生、家柄など」を表す。同じ意味で「be動詞」ではなく「come」などと一緒にも使える。例えば「アルクェイドは“真祖”の出です。=Alqueid comes of“the True Ancestor.”」とも言える。
(「ancestor」は「祖先、祖先」だから「true」「本当の、真実の」と合わせて“真祖”=True Ancestor。)
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