トーキョーポップ「いくつかのマンガは自社サイトからのみ発売」と発表。

随分取り上げようか迷ったのだが、あまりに話題になっているため、簡単に取り上げることにした。

一昨日から昨日にかけて、英語圏(北米+イギリス)のマンガ関連ブログはこの話題で文字通り1色となった。

その話題とは、北米でマンガを出版するトーキョーポップのマイク・カイリー氏が業界サイトICv2とのインタビューにおいて発表した「この11月からいくつかのマンガ作品は一般書店、専門店に流通させず、自社のサイトのみで発売する」という新しいトーキョーポップのビジネス方針だ。

マイク・カイリー氏のインタビュー(1)(2)

この新方針によると、トーキョーポップのサイトからのみで売られることになったマンガは、現時点で発表されているものでアメリカ産、韓国産、日本産マンガ17作品。日本産マンガの中にはあの『ドラゴンヘッド』も含まれている。

この新方針を乱暴に簡単にまとめてしまうと、トーキョーポップは現在売れ行きが芳しくない、もしくはこれから出しても売れ行きが見込めないと思うマンガをわざわざ書店/専門店に出すことを止めた、ということらしい。これによって、部数が多く見込めない作品でも中間業者に払う分が減り利益率が上がる。更には「トーキョーポップ・サイト限定発売」という言葉が付くことで、“もっと注目されるべきなのに売れ行きが伸びていない”とトーキョーポップが考える作品の宣伝にもなるというわけだ。

最近トーキョーポップのサイトは大きく変わり、現在はアメリカで言うMyspace、日本でのmixiのような、一種のコミュニティ・サイトになっている。トーキョーポップでは、「サイト限定発売マンガ」を置くことで更にヒット数を増やし、このサイトが北米マンガファン・コミュニティの中心地として機能することを念頭においているようだ。

カイリー氏によると「サイト限定発売マンガ」はEマンガと呼ばれるようなネット上で読むマンガではなく、現在のところは紙媒体のマンガ。

このインタビューがICv2のサイトにアップされるやいなや、英語圏のネットではトーキョーポップの新方針に対して賛否両論の渦が巻き起こった。マンガについてのレビュー・ニュースを載せている有名ブログに留まらず、インタビューを載せたICv2も昨日と今日の二日に渡って3人のコミック専門店の店主の意見を載せている。

わたし自身、ネットの意見を全て読むことはできないので(←当たり前だ)、わたしの読んだ範囲でこの新方針に対する意見のごくごく一部を載せてみると、

まずトーキョーポップに好意的な意見。

毎月たくさんのマンガが出版される現状で、書店の棚スペースも限られている。出版側の多少の方針変換は止むを得ない。これからも続く作品の場合、売れないことで途中で打ち切られるより、どんな形でも出版されたほうが良い。

好意的ではない意見。

コミックス専門店はマンガの売上に多くは貢献していないとは言え、サイト限定作品を発売するのは専門店を切り捨てる行為。地元のコミックス専門店でマンガを買うのを楽しみにしている多くの読者の楽しみを奪う。

ただ「中間業者がいなくなったのに価格が安くなっていないのはおかしい」と指摘する声に対しては、「通常のコミックスよりかなり安くすると値引き行為にあたり、契約によって書店以外が値引きすることはできない」という意見も見られた。ただしわたしはこの点詳しくないのでこの意見が正しいのかはわからない。

色々な意見があると思うが、一つ言えるのはトーキョーポップはいつもとっても積極的に新規事業を打ち出している、ということ。

カイリー氏によると「限定発売」で人気が出ても1回「限定発売」にまわった作品を書店に戻すことは考えていないらしい。『ドラゴンヘッド』の新刊が出るのを日本での出版当時楽しみに待っていたわたしとしては、これで少し注目度が上がれば嬉しいのだが。。。

追記:『ドラゴンヘッド』はいつの間にか「オンライン限定発売」のリストからはずされていた。確かな情報ではないが、トーキョーポップは「オンライン限定発売」の見直しを検討し始めているらしい…

更に追記:トーキョーポップは『ドラゴンヘッド』を含む数作品を「オンライン限定発売」のリストからはずす決定をした。トーキョーポップ側からは「自分たちが大事に考えるコミックス専門店からの意見を重視した結果、方針を一部変更した」という趣旨の発表が行われた。

1〜5巻までは一般書店・コミックス専門店で売られていたが、6巻からはトーキョーポップのサイトのみで売られることになった英語版『ドラゴンヘッド』。

Dragon Head 1 (Dragon Head (Graphic Novels))

Dragon Head 1 (Dragon Head (Graphic Novels))