北米アニメ市場2006年総括とアニメDVDトップ25。

今回は前回の「北米マンガ市場2006年総括」に引き続き業界向けニュースサイトICv2の発行する「ICv2アニメ・ガイド:2007年第一四半期」から、北米の2006年度アニメ売上についての総括記事の要約を載せたいと思います。記事の最後に2006年「アニメDVDトップ25」も。

長い記事なので、今回もまた“これだけ読めばだいたいの内容が掴めるので時間の無い人はこちらだけ”な「短い要約」から。

2006年度の北米アニメ市場は明るい話題のある一方で、問題点も浮き彫りになった年だった。

  • アニメ・コンベンション数、その参加者数は過去最大になり、北米でアニメ人気が続いていることを示した。
  • テキサスにアニメの新販売会社が設立された。
  • 米アニメ販売会社大手に日本からの資金投入があった。
  • 2006年初頭にアニメを扱う大手量販店の倒産があり、アニメ業界に経済的な打撃を与えた。
  • アニメDVDの販売点数、売上ともに1昨年に比べて減少した。

ここから「長い要約」です。

2006年は北米アニメ市場にとって、明るい将来性と問題点の両面を明確に示す年となった。アニメのコンベンション数とその参加者数は過去に例のないほど増加した反面、長年業界内で懸案となっている問題点も明らかになった。

2006年はアニメ業界にとってMusiclandの倒産という最悪の出来事で始まった。800店舗を有したMusicland(訳者註:Musiclandはアニメを多く取り扱っていることで知られた大手量販店。)の倒産によって、何百万ドルに及ぶ損失が発生し、更には代わりの販売経路の確保も必要となったのだ。幸いTransWorldがMusiclandの一部を買収したことで、180店舗の存続が決まり部分的な解決は見られた。後にTowerRecordが倒産したことも業界には痛手となったが、TowerRecordは長い間経済的に窮地にありアニメ会社が取引を控えていたためその影響は比較的少なかった。

業界関係者がICv2に語ったことによると「(2006年の)アニメの小売店での販売状況は、過去数年に比べるとずっと順調だった」が、この“順調”は決して“活気がある”と言えるものでないことは、Transworldが11月に1千万ドルを超える損失を計上していることからもうがかえる。ただしDVD販売が競争の激しい厳しい状況にあると言っても、小売店での音楽販売は更に厳しい状況にあり、TransWorldにとって大きな問題なのは音楽事業だった。

業界にとって一つの明るい兆しとなったのは、米アニメ業界大手が日本から新たな資金援助を受けたことである。2006年6月にはGeneonの親会社である電通と三菱が提携を結び、三菱はGeneonの株34%を所有、双日もADVに出資している。この資金注入によってGeneonとADVは2006年下半期にライセンス獲得数を増やすことができた。

2006年下半期にはIllumitoonという新しい会社も北米アニメ業界に参入した。前Funnimation役員が立ち上げたIllumitoonは市場の少年層をターゲットにしている。

ただ2006年のアニメ販売数に反映されるには、新たな資金投入と新会社の創立は時期的に遅かったようだ。VideoScanの調べでアニメ販売数は5%減で、2005年度の610万本から2006年には580万本に落ち込んでいる。2005年から2006年の減少は、2004年(660万本)から2005年(610万本)への減少率7.5%に比べると激しくはないが、2003年(680万本)以降の下降傾向は続いている。

<北米でのアニメDVDの販売数>

2003年 2004年 2005年 2006年
 680万  660万  610万  580万

ただしVideoScanにはWal-Martでの売上数は含まれていない。Wal-Martで売られているアニメDVDの作品数の種類は多くはないが、作品によっては売上の50%以上がWal-Martでのものである。

アニメ人気の増大とDVD売上の落ち込みの矛盾は、比較的値段の高いアニメDVDへの消費者の抵抗感にも起因するかもしれない。アメリカのアニメ会社はライセンス料、吹替え版製作料を負担しなければならず、現在の市場規模を考慮すると、米TVシリーズのDVD並の競争力のある価格設定が難しい。

その上、通常DVD発売よりも早くネット上に流される違法ダウンロード版がDVDを購入する以外の選択肢として存在している。VideoScanの2006年度アニメDVD売上トップ10の作品が全てTVシリーズではなく映画なのはこれが理由かもしれない。

しかし少なくともDVD販売点数の下降傾向は2006年で終わる可能性が高い。2005年に759だったDVD発売点数は2006年は607と20%も減少したが、新会社の参入と新タイトル獲得の動きが高まっていることから少しずつ上がって行くことが予想される。

2007年に向けて『アフロ侍』『ケロロ軍曹』などの人気作品が発売されるものの、2007年の北米アニメ業界はアニメ販売会社にとっても小売店にとっても厳しい環境におかれることになるだろう。ICv2のインタビューによると、小売店では競争力のある価格にあわせるために利幅を減らし、アニメDVDの実際の販売よりもアニメ関連商品で多くの販売利益を得ているようだ。

以下のリストはICv2が選んだ2006年のアニメDVDトップ25。売上のトップ25ではなく、売上に加えて小売店や販売会社などへのインタビューから製作されたものだとか。

  1. Final Fantasy VII: Advent Children
  2. ハウルの動く城
  3. ポケモン/アドバンスジェネレーション ミュウと波導の勇者
  4. ドラゴンボールZ 復活のフュージョン!!悟空とベジータ&龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる
  5. 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者
  6. 犬夜叉 紅蓮の蓬莱島(映画)
  7. もののけ姫
  8. 鴉-KARAS-
  9. となりのトトロ
  10. Voltron*1
  11. 鋼の錬金術師(TV)
  12. ストリート・ファイター2(映画)
  13. ナルト(TV)
  14. サムライ・チャンプルー
  15. エウレカ
  16. ヘルシング Ultimate
  17. 天上天下
  18. 機動戦士ガンダムSeed Destiny
  19. 千と千尋の神隠し
  20. Bleach
  21. トリニティ・ブラッド
  22. 強殖装甲ガイバー
  23. Ergo Proxy
  24. フルメタル パニック!The Second Raid
  25. サムライ7

*1:Voltron:『未来ロボ ダルタニアス』『百獣王ゴライオン』『機甲艦隊ダイラガーXV』を編集で1つの作品にしたもの。