アメリカでマンガ雑誌、新たに創刊。

ライターのブリジッドさんのマンガに関するブログManga Blogで、アメリカで新たにマンガ雑誌が創刊されるという話題が取り上げられていた。

フランス最大の出版社Hachette Livreのアメリカ支店であるHachette Book USAのグラフィック・ノベル専門の新レーベル「Yen Press」のカート・ハスラー氏が直接ブリジッドさんに語ったところによると、Yen Pressは2008年頃マンガ雑誌を創刊する予定だということだ。そのマンガ雑誌は月刊誌で7〜8つのマンガが掲載され、白黒。マンガ以外にもマンガに関する記事やレヴューもあり、広告も入る。

ハスラー氏によると、「世界中からのマンガを掲載し、一つの雑誌にまとめます。多くの雑誌が、特定のタイプの作品や特定の読者層や特定の国籍のマンガ家を集める傾向にありますが、新雑誌ではもっと色々なタイプのものを一緒に提供するようにするつもりです」とのこと。連載されたマンガは後で単行本にまとめられ発売される。

日本のマンガも連載される予定だが、アメリカ産オリジナルマンガも載ることが決まっている。このブログでも何回か取り上げたアメリカ産マンガの人気作品『Dramacon』(Tokyopop社)の作者によるファンタジーがそれ。タイトルは『Nightschool』で、デーモンやバンパイアなどの魔物のための夜間学校に、消えた妹を捜して入学した魔女アレックスの戦いのドラマとか。

↓『Dramacon』。マンガの原作者志望の女の子が、始めて参加したアニメ・コンで出会った男の子と恋に落ちるお話。

Dramacon Volume 2

Dramacon Volume 2

連載作品は人気によっては最後まで連載されるとは限らず、しかも掲載が毎号ではなく隔月掲載になることもあるようだ。

ここ10年ほど、アメリカではマンガの雑誌がいくつか創刊されてきたが、現在でも残っているのは数えるほど。『Shonen Jump』『Shojo Beat』などVIZから出ている日本産マンガの雑誌以外には、きちんと継続しているものはDramaQueenから出ている現在2号目のオリジナルBLマンガ隔月刊雑誌『RUSH』、Icarus Publishingの成人向け日本産マンガ雑誌AG』他数冊。「アメリカではマンガ雑誌は売れない」という考えがアメリカのマンガ業界に定着していると言う。

ハスラー氏はブリジッドさんのブログで「経済的なことは大丈夫」と自信がある様子を見せていて、ブリジッドさんは親会社のHachetteのバックアップに裏付けられた自信だろうと推測している。

Hachette Book USAという大手による、グラフィック・ノベルを主に出版するレーベルYen Pressの立ち上げが昨年の秋に発表された時は、その立ち上げは(薄いパンフレット・タイプのコミックスではなく)単行本タイプのグラフィック・ノベル/マンガ市場の成長の証拠として報じられていた

Yen Pressの出版物は子供向け小説、アメリカ産グラフィック・ノベル、アメリカ産オリジナルマンガ、輸入(日本産など)マンガ、ウエブコミックとなる予定だが、今回の新雑誌創刊の話が示すようにYen Pressが日本産、非日本産に限らずマンガにかなり力を入れているのは明らかだ。

特にこの新雑誌について語ったカート・ハスラー氏は、昨年業界向けニュースサイトICv2によって「アメリカのマンガ市場で最も影響のある人物」に選ばれた人。当時は大手書店Bordersのグラフィック・ノベルとマンガ担当バイヤーで、その市場成長に著しく貢献したとされた人物だ。その後ハスラー氏はHachette Book USAに引き抜かれ、元DCコミックスアメリカの大手コミックス出版社)から同じくやってきたリッチ・ジョンソン氏と共にYen Pressの責任者となっている。

(この辺りの詳しいことは当ブログの記事「米大手出版社マンガ事業参入と、その責任者に就任した大手書店グラフィック・ノベル部門担当バイヤー」(2006年11月9日)をお読みください。)

Publishers WeeklyYen Pressに関する記事によると、ハスラー氏は自ら別名でマンガの原作も担当しているらしい。Tokyopop社から出版されている『Sokora Refugees』↓がそれ。ハスラー氏の原作者としての名前は「Segamu」。
↓『Sokora Refugees』。主人公カナの元に突然エルフの少年が現れ、カナに彼女自身もエルフの1人だと告げる。そして少年はデーモンに襲われている祖国Sokoraを守るための戦いにカナを導く。本作品は“ファンサービス”がたくさんあることでも有名だとか。

Sokora Refugees 1

Sokora Refugees 1

ハスラー氏がこれからYen Pressから出版されるオリジナルのマンガの原作者を担当することもあるということだ。

先日ニューヨークで行われた第2回「ニューヨーク・コミックス・コンベンション」で、Yen Pressは自社が出版権を取得した日本マンガをいくつか発表していた。下↓はその中の一つ、スクエア・エニックス社の『スパイラル−推理の絆』。

スパイラル―推理の絆 (1) (ガンガンコミックス)

スパイラル―推理の絆 (1) (ガンガンコミックス)

色々御心配をおかけしましたが、ようやく風邪がなおって人間らしくなってきました。これからはこの1ヶ月の遅れを取り戻すようバリバリ働かねば。。。