金魚が煙草を吸い寿司が回転する場所で:NYタイムスの『マインド・ゲーム』批評記事

9月2日付けでNYタイムスに湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』の批評が掲載された。(↓要約)

マインド・ゲーム

見るべき作品ではあるが、観客の目にとっても心にとっても一度に理解するには多くのものを詰め込みすぎている。実写の映像の点滅が組み込まれた手描きのようなアニメで、タバコを吸う金魚と回転する寿司と天国へ通じる大阪の通りが登場する。ある時は魅力的で、ある時は見るものを消耗させる力作。

アニメファンには湯浅政明監督・ロビン西原作というだけでこの映画自体が天国みたいなものかもしれない。長編アニメによくある入り組んだとりとめの無いプロットだが、視覚的構成とリズムは新鮮で一風変わっている。

湯浅監督はアニメの流動性を巧みに活かし、ミュージック・ビデオのような勢いのあるカットをつなぎながらリアリズムとファンタジーの間を行き来する。実際、最も独創的で面白い場面はオープニング、エンド・クレジット、天国へのトリップのシーンで、それはヒップ・ホップのサンプリングのヴィジュアル版のようであり、魅惑的なスタイルで情報と感覚の急流を放出する。

しかし他のシーンではテンポが遅く冗長になる。クライマックスシーンは“息を呑む”というより“息切れ”という感じだ。この映画の想像力のエネルギーは長編映画には向いていない、と観客は思わずにはいられない。湯浅監督が彼の非凡なエネルギーをより圧縮し、観客に心の中でこの映画を組み立てる余地を与えていたらこの作品はもっと良いものになっていただろう。

マインド・ゲーム』はニューヨークのThe Musium of Modern Art(MOMA)で7月から行われていた日本アニメ上映シリーズのトリを飾り9月2日から10日まで上映される。