米業界サイト選出「2005年度 アニメ・オブ・ザ・イヤー」

業界サイトICv2の選ぶ2005年のアニメ賞。「マンガ賞」は当ブログ1月5日エントリー「米業界サイト選出・2005年度 マンガ・オブ・ザ・イヤー」を見てください。

「アニメ・オブ・ザ・イヤー」→ 犬夜叉

Viz Mediaの『犬夜叉』が2年連続「アニメ・オブ・ザ・イヤー」を獲得した。受賞の理由は3つの『犬夜叉』映画の成功。Viz広報によると過去18ヶ月の3作品合計売上が100万本を記録した。40巻に及ぶTVシリーズ各DVDとボックスセットを合わせて考えても、この作品の強さは明らかである。
↓2005年アメリカで公開・発売された映画『犬夜叉 鏡の中の夢幻城』DVD(リージョンコード2)。

映画 犬夜叉 鏡の中の夢幻城 [DVD]

映画 犬夜叉 鏡の中の夢幻城 [DVD]

↓『犬夜叉』マンガ英語版。
Inu-Yasha, Volume 1

Inu-Yasha, Volume 1

アニメ会社・オブ・ザ・イヤー」→ ディズニー・ブエナビスタ

この賞の決定は大変難しいものだった。2005年のアニメDVD販売市場はあまり輝かしいものではなかったため、多くのアニメ販売会社が市場での長期的体力を温存しようと動いていた。2005年度TVアニメDVD売上1位の『鋼の錬金術師』を販売したFUNimationは、2006年市場に大きな影響を与えると予想される『トリニティ・ブラッド』『魔法先生ネギま!』『スピードグラファー』『バジリスク』を獲得。Vizは「Shonen Jump Video」というレーベルを立ち上げ、2006年度TVアニメ売上トップ第一候補『ナルト』を獲得した。

しかし、アメリカでアニメというメディア拡大に貢献したという点において、ICv2は2005年度「アニメ会社・オブ・ザ・イヤー」にディズニーを選んだ。ディズニーの販売全体で見るとアニメの占める割合は微々たるものだが、スタジオ・ジブリとの配給契約によって、アメリカのどのアニメ販売会社よりも多くの市場シェアを得ることに成功したのである。

更にこのミッキーマウス本舗は『ハウルの動く城』の劇場公開にハリウッド的要素をもたらした。公開に先立ち近代美術館(MOMA)で宮崎駿回顧展を開き、そのハイライトとして巨匠その人をアメリカに連れてきたのである。加えて、今月ケーブルチャンネルTurner Classic Moviesで過去のジブリ作品をゴールデンタイムに放送するよう手配した。

ディズニーのホームビデオ販売担当・ブエナビスタ発売の『風の谷のナウシカ』は、2005年度に単独作品として最も売れたDVDとなり、3月発売予定の『ハウルの動く城』がその成功の道をたどる可能性は高い。

スタジオ・ジブリがディズニーにすばらしい作品を提供しているということは事実としても、ディズニーが英語吹替版製作に関して第一級の仕事をしていることもまた事実。ジブリ作品に対しては一流の声優を起用し、日本語と英語の両方のサウンドトラックの入った特典満載の優れた2枚組みDVDを発売している。
↓『ハウルの動く城』DVD(リージョンコード2)。

ハウルの動く城 [DVD]

ハウルの動く城 [DVD]

↓『ハウルの動く城』英語版シネ・マンガ。
Howl's Moving Castle Film Comic, Vol. 1

Howl's Moving Castle Film Comic, Vol. 1

「アニメDVD・オブ・ザ・イヤー」→ 風の谷のナウシカ

アップルシード』『犬夜叉』『ドラゴンボールZ:超戦士撃破!!勝のはオレだ』『攻殻機動隊イノセンス』『スチームボーイ』などの作品のおかげで、2005年のDVD売上チャートには例年以上にアニメ映画が登場した。しかし一般市場で昨年DVD売上トップに立ったアニメは宮崎駿の『風の谷のナウシカ』である。大手量販店の売上のみならず小売店やオンラインショップの売上でも善戦した。アニメ映画、特に宮崎駿作品は長期に渡って売れ続ける傾向がある。2003年度アカデミー受賞作品『千と千尋の神隠し』は2005年になってもVideoScanのアニメ売上トップ10に入っていた。
↓『風の谷のナウシカ』DVD(リージョンコード2)。

風の谷のナウシカ [DVD]

風の谷のナウシカ [DVD]

↓『風の谷のナウシカ』マンガ英語版。
Nausicaa of the Valley of the Wind 1 (Nausicaa of the Valley of the Wind)

Nausicaa of the Valley of the Wind 1 (Nausicaa of the Valley of the Wind)

アニメTVシリーズDVD・オブ・ザ・イヤー」→ 鋼の錬金術師

2005年アニメ映画はVideoScanのチャートに多く入ったが、幾つかのTVアニメシリーズは映画と比べても見劣りしない売上を誇った。Geneonの『サムライ・チャンプルー』(渡辺カウボーイ・ビバップ信一郎)は2005年の年間を通して良く売れたものの、売上のトップの座についたTVシリーズはFUNimationの『鋼の錬金術師』だった。クリスマスを最終日とする週のVideoScanアニメ売上トップ10リストでは、『鋼の錬金術師』DVD6巻が3位、1巻が10位にランクイン。リストに入った他のアニメは全て映画だった。
↓『鋼の錬金術師』DVD(リージョンコード2)。

鋼の錬金術師 vol.1 [DVD]

鋼の錬金術師 vol.1 [DVD]

↓『鋼の錬金術師』マンガ英語版。
Fullmetal Alchemist 2 (Fullmetal Alchemist)

Fullmetal Alchemist 2 (Fullmetal Alchemist)

「アニメビジネス・オブ・ザ・イヤー」→ NavarreによるFUNimation買収。

2005年初頭、ミネソタに拠点を置き幅広くエンターテイメント・ソフトを製作・販売するNavarre Corporationが大手アニメ販売会社の一つFUNimation Productions Ltd.の買収を発表した。契約は5月に締結されたが、Navarreが株式上場企業であるという事実がアメリカのアニメ市場の認知度を高めるのは必至。買収過程でNavarreはFUNimationの2001年度(4980万ドル)から2004年度(7240万ドル)の売上と、2001年(2000万ドル)から2004年(2980万ドル)の税引き前利益を公開した。

しかしこの買収は業界の重要企業であるFUNimationの売上高を公にしただけではない。買収後FUNimationは日本で人気アニメの権利獲得により積極的になり、24時間デジタル衛星放送とケーブル放送を設立する計画を発表した。
↓買収されたFUNimationが来年アメリカで発売予定の『バジリスク』DVD(リージョンコード2)。

ビニ本になって発売されている『バジリスク』マンガ英語版。
Basilisk 1: The Kouga Ninja Scrolls

Basilisk 1: The Kouga Ninja Scrolls

「事件・オブ・ザ・イヤー」→ アニメ関連商品、メインストリームへ。

アニメ・マンガ関連商品がアメリカで販売されるようになってしばらく経つが、以前商品は通常小さい輸入/輸出会社によって扱われてきた。 しかし2005年になりこのニッチ・マーケットがメインストリームの市場へと入り始めた。小売サイドから見ると、モールに出店するHot TopiチェーンがGeneonやVizといったアニメ会社と契約を結び、たくさんの人気アニメ作品の多様な関連商品を扱い始めたのである。一方で販売サイドでは、日本の小売チェーン・ゲーマーズと提携するBroccoliがカレンダーや服といった“キャラクター商品”を輸入し始めた。

『ナルト』商品を販売する大手輸入会社Toynami、アニメ関連のハイクオリティ・フィギュアを販売するYamato、そしてコミックスの大手取次ぎであるDiamond Comic Distrubutorsが日本のおもちゃメーカーから数多くの商品輸入するなど、業界大手がアニメ関連商品の販売を拡大している。

マーケティング・キャンペーン・オブ・ザ・イヤー」→ ADVとViz。

アメリカでのアニメ視聴者拡大を目的に大胆で革新的な方法を取ってきた二つのアニメ会社に栄冠を与えることに決定した。ADVは違法ダウンロードに使用されてきた共有ソフトであるBit Torrentを、マーケティング・ツールとして使用。購買前のトレイラーやギャラリーなどの特典視聴の無料ダウンロードをこのソフトを使って提供した。Vizの『犬夜叉』映画キャンペーンは同様に大胆で、アメリカ中のウォールマート(大手スーパーマケット)駐車場にトラック型移動劇場を配置。即席映画館で無料で映画を鑑賞できるようにした。
↓Vizが移動型劇場を使って宣伝を行った『犬夜叉:天下覇道の剣』DVD(リージョンコード2)。

映画 犬夜叉 天下覇道の剣 [DVD]

映画 犬夜叉 天下覇道の剣 [DVD]

↓アニメを使ってマンガにした『犬夜叉』アニ・マンガ英語版。
Inuyasha Ani-Manga, Vol. 1

Inuyasha Ani-Manga, Vol. 1

ICv2"ICv2 2005 Anime Awards Part 1"(1月10日)
ICv2"ICv2 2005 Anime Awards Part 2"(1月10日)