海賊版と戦うアニメ販売店 in 米デンバー。
アメリカ・デンバーの地方紙WestWordの記事"Anime Attraction: Local businesses want give animation bootleggers the boot."(2月9日掲載)より要約。
アメリカ地方都市の小売店での、アニメ海賊版の状況をリポートした記事。海賊版に売上を奪われたアニメ販売店も登場。ちょっとかわいそうだよ。なんとかならんか。
↓また長いですけど、時間のある時にどうぞ。
最も献身的なファンにとっても、日本アニメ海賊版DVDの誘惑に抗うのは難しい。日本アニメを趣味として続けるのは高くつくからだ。DVDは30ドルから50ドル。それに200ドルもする商品さえある。
デンバーのアニメクラブ「デンバー・アニメ」の会長であるジョン・ウォーカーは、クラブの仲間たちが海賊版に手を出すのを見て、度々がっかりしてきた。海賊版はオフィシャル品がアメリカで発売されるかなり前に、法外に安い値段で売買される。「ファンとしては悲しい」とウォーカーは言う。「どうしてみんな業界を支えたいと思わないんだろう」
ジョセフ・ヘンダーソンはそんなウォーカーが米アニメ業界の最大の敵とみなしている人物だ。ヘンダーソンは、デンバー南部の小規模ショッピングモールで、父親と「アニメニアックス」という店を営んでいる。扱っているのは、マンガ、フィギュア、Tシャツ、日本のお菓子、そしてDVD。しかしそのDVDの在庫のほとんどが、アニメファンに「HK」として知られる海賊版である。
「HK」とは香港の頭文字で、主に海賊版は中国や東南アジアで作られていることからこう呼ばれている。アメリカに海賊版アニメを供給している大規模違法コピー施設は2005年、香港当局によって摘発されたが、その際差し押さえられたのは航空便でアメリカに送られる予定の23万本のDVDだった。
ヘンダーソンは自分の取り扱うHKアニメがライセンスの無い違法コピーであることを完全に自覚しているが、自分自身は違法なことをしていると思っていない。何故なら、著作権は日本とその違法コピーの製作者との間の問題だと考えているからだ。
もしハリウッド映画の違法コピーを売ったとしたら?この問いに対してヘンダーソンは、それは罰を受けるべき罪だと認めた。ただ今のところ彼の主張は、自分の行っているビジネスは国際的な著作権の「グレー・ゾーン」内にあり、“海賊版”という呼び方をすることも拒否すると言う。
連邦捜査局コロラド支局の特別捜査官ケヴィン・フィオレは、知的財産権侵害を専門としている。そのフィオレも海賊版アニメを扱う小売店を起訴することの困難さは認めざるを得ない。海外まで商品を遡って調べることは更に別の調査が必要になるからだ。ただそれは直接海賊版アニメを扱うアメリカ人が逮捕される可能性を否定するものではない。フィオレによると、調査の範囲によっては、罰金を科せられる場合から電信・郵便法違反の重罪になる場合もある。
しかし初心者にとって海賊版を見分けるのは難しい。「アニメニアックス」の棚に並ぶ様々なアニメDVDは、大手量販店のそれと全く変わらないように見えるのだ。
何かおかしいと気づくための最初の手がかりは、その店のトップの売上を誇る1本にある。『ファイナル・ファンタジーVII:アドベントチルドレン』。このDVDはアメリカで今年の3月末に、27ドルの価格で発売の予定である。しかし、ここではたった16ドルで既に売られている。『ナルト』DVD3枚入りボックスセットも24ドル。これもアメリカでの権利を保有するVizによると、アメリカではまだ発売されていない。更によく見ていくと、DVDのカバー絵が少しぼやけて、小さい字が読み難いことに気づく。まるでオリジナルからコピー機でコピーされたようだ。DVDディスク上の絵も糊付けされていて、印刷ではない。そして字幕は中国語と英語。この2ヶ国語での字幕は、ほとんどの公式商品には見られない。模造品の画質は水準以下であり、翻訳は度々笑えるほどいいかげんである。某作品の字幕では10代の忍者が13に及ぶ技のテストに合格するよう言われるが、その合格=pass が、尻=assになっていた。
「マーケットがなければ、ビジネスは成り立たない」そうヘンダーソンは言う。「みんなが買うから、仕入れるんだ」ヘンダーソンは、自分の海賊版販売がアメリカのアニメ業界に価格を下げるようプレッシャーをかけると見ている。アニメは若いファンにとって高すぎるのだ。
ロジャー・モースにとって、これは聞きなれた自己弁護だ。
「もしもし、こちらはギミー・アニメです」35歳のアニメ店経営者は受話器に向かって答えた。忍耐強く相手の言うことを聞いた後「『アドベントチルドレン』は3月末発売です。申し訳ありません」と言って受話器をおき、怒りを露わにした。「もちろん、通りを行った向こうでは3ヶ月も前から海賊版『アドベントチルドレン』を売ってるよ!」
モースはアニメクラブで出会った妻と一緒に2002年からこの「ギミー・アニメ」店を開いている。商売は順調で、黒字が出るところまできていた。しかしヘンダーソンが「アニメニアックス」を2003年に通りを下ったところで開いてから、売上は低迷し、結局真っ逆さまに下がり始めた。
「どうしていいかわからない。妻と私は時間とお金と汗と血をこの店につぎ込んできた。でも海賊版と争っても勝ち目はない」と、モース。
アニメには低品質の海賊版の長い歴史がある。モースは1990年、大学生の時アニメを好きになった。それは『ポケモン』や『遊戯王』といった番組が人気を得るずっと前、更にはCNでもっと大人向けの『攻殻機動隊』や『カウボーイ・ビバップ』が何度も放送され、メインストリームに近い位置にアニメを押し上げるずっと前である。1990年当時、アメリカのアニメファンは非公式なネットワークに頼っていた。テープのコピーを知り合いに渡すという方法である。このやり方は「遵守すべき作法」とも言うべきものに従って行われていた、そうモースは述懐する。「アニメのコピーで儲けてはならない」ということだ。違反したものは、アニメファンのコミュニティから異端として敵視された。
「一対一の個人のやり取りなら、ダメージはないと思う」と、モース。「でも、利益のために1万以上もコピーして売るのは、一人の友達のためにコピーを作るのと、クリエイターや業界全体に与えるインパクトが違う」
モースが海賊版を扱わず、ヘンダーソンの店に対抗し続けるのはそのためだ。以前モースは、教育用として海賊版DVDを店頭においたことがある。ラベルをつけて消費者にどうやって海賊版を見分けるか示したのだ。しかし、それは逆効果だった。あまりに多くの客がこのDVDは買えるのかと聞いてきたのである。
そこで今度は、連邦捜査局、司法局、アメリカ関税局、そしてデンバーの警察にヘンダーソンの店について報告した。しかし、FUNimationなどのアニメ販売会社数社からの停止命令の手紙と、FBIの1回の視察以外なんの成果もなかった。その視察さえ、ヘンダーソンは「ただのメモ取りだった」と話し、「アニメニアックス」は何の痛手も受けていない。
モースのストレスはたまる一方だが、実際ヘンダーソンと直接対決しているわけではない。「人と争いたくないんだ」とモースはため息をついた。「たったこれだけのことをするにもかなりの時間がかかった。ヘンダーソンは自分のやっていることがわかっていて、ただ気にしないだけだ。何故って、買う人がいるから。ヘンダーソンはある種のサービスを提供しているつもりでいるんだろう」
「法的なプレッシャーはない」と、ヘンダーソン。「少しも感じたことは無いよ。それがあの人物をを余計いらだたせているんだろうね」
「デンバー・アニメ」のウォーカーは、海賊版と戦うため、ファンによる組織を立ち上げた。5000人のファンを集めた昨年のアニメ・コンベンション「ナン・デス・カン」で、売り手が持ち込んだDVDを調査したのだ。海賊版とわかったら、コンベンション会場内に商品を持ち込むことを禁止。もし売っている場でそのことが発覚したら、組織のボランティアは売り手にブースのポスターをはがし、商品を箱に詰めて会場を去るよう指導することになっていた。しかし実際摘発はゼロ。ただ、他のアニメ・コンベンションでは退去させられた例があったという話である。
ウォーカーはヘンダーソンをこの秋のコンベンションからブラックリストに載せる。そして会場にくる全ての販売業者をチェックするつもりだ。もし海賊版を売るところを見つけたら、「ナン・デス・カン」だけでなく、他のマニア系コミュニティにも参加できないようにする。SFファンのコンベンション「スター・フェスト」、ゲームファンの集まり「ゲンギス・コン」「マイル・ハイ・コン」、そして妖精、ゾンビ、魔法などを扱う「オーパス・ファンタジー・アーツ・フェスティバル」などでも出入り禁止になるのだ。コンベンションは小売店にとって重要な収入源なので、出入り禁止となれば大きな痛手になるだろう。
しかしヘンダーソンは気にしない。「結局のところ、人はやりたいことができる、ということだ。もし本当に人々が何かを欲しければ、結局買うのだから」
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今日はこの記事の他に「米フェニックスで、“アニメ大学”設立」なんてニュースもあったんですが、それは明日にまわします。
最近どうもヘロヘロしていて、誤字脱字が多いです。読んで下さっている方、スイマセン。特に締め切りが多い週の後半は誤字脱字が多い傾向が。。。もちろん私も仕事の場合は、何十回も推敲するんですが、どうもブログだと気がユルむようです。←自己弁護(-_-;)