北米最大のアニメイベント「アニメ・エキスポ」、2日目で入場者数新記録:北米でのアニメ人気は上がってるのか、下がってるのか。
7月1日〜4日にカリフォルニアのアナハイムで行われていた「アニメ・エキスポ」は北米最大のアニメイベント。
去年に引き続いてのアニメ!アニメ!さんの詳細レポートや、ULTIMO SPALPEENさんの「アニメエキスポ2006、始まりました――日米エド共演ならず」、「アニメエキスポ、続いています」、「アニメエキスポ2006・3日目――コスプレ・コンテスト」 などを読んでも現地の雰囲気は伝わってくる。
北米でのアニメDVDの売上は落ち込んできているのにもかかわらず、アニメコンは依然として盛り上っているようだ。
ICv2の7月5日の記事「アニメエキスポ、2日目で入場者数新記録("Record Crowds at Anime Expo: After Only Two Days")」より要約。
2006年7月1日から4日までカリフォルニアのアナハイムで行われた「アニメ・エキスポ」は大成功に終わった。4日間の日程のうち2日を終えた時点で過去最大の昨年の入場者数を上回ったのだ。
2005年度の「アニメ・エキスポ」の入場者総数は3万3千人で、2004年度は2万5千人、2003年度は1万7千人で、今年の入場者数の予想は4万から4万7千人だった。
しかし2日間が終わった7月2日の入場者数は既に3万4千人に達し、予想数は容易に達成できると見られている。
この入場者数の大幅な増大には、入場の際の混雑や不手際を少なくし、入場登録を簡素化・合理化して、ファンをすぐに場内に入れるようにしたことが大きく貢献している。
今年「アニメ・エキスポ」はより広い通路とブースのスペースのために、会場ホールを従来の1つから2つに増やした。その変更の良い点として、人の往来が以前よりスムースになったことがあげられるが、逆に移動のためにコンクリートのフロアを長く歩かなければならなくなってしまった。
例年通り、大手アニメ・マンガ企業のブース*1では、サイン会、無料サンプル、などスペシャル・イベントのためのファンの長い列ができていいる。1日目の午前中、Geneonのブースでは日本のバンド*2が演奏して注目を集めていた。
商品を売るブースの業者たちも、このイベントでブースを開くコストを考えても、この入場者数と売上には満足している様子。
間違いなく「アニメ・エキスポ」の主催者もこの記録破りのファンの入場者と販売業者・製造業者・出版社の参加数にも満足していることだろう。この成功は、今回のコンに参加したアニメ・マンガ界の有名人たちの素晴らしいラインアップ*3も影響していると思われる。
今回の「アニメ・エキスポ」を受けて、アニメ!アニメ!さんの「アニメエキスポ2006で見えてきたこと」でとても面白い考察がなされている。それは、
「日本アニメは米国で人気が高まっているのか、それともなくなっているのか?」である。
少なくとも商業市場で見る限りここ3年間でアニメDVDなど関連商品市場は急激に縮小している。実際に多くのアニメ関連企業がその影響を受け、経営改革を迫られている。これだけ考えれば日本アニメの市場は明らかに後退しつつある。
ところが同じ期間の米国で、日本アニメはカートゥーンネットワークなどを中心に高視聴率を維持し続けている。さらに、今回のアニメエキスポ(AX)を代表とするアニメコンベンションはその数と参加人数を急激に増やし続けている。
一体、米国では何が起きているのか?アニメは人気があるのかないのか?このふたつの現象を合理的に説明出来る方法はあるのだろうか?
「ここ3年間でアニメDVDなど関連商品市場は急激に縮小している。」と書いておられるのは、同じくアニメ!アニメ!さんの「2006年版米国アニメ市場レポートJETRO公開(6/19)」でも紹介のあったJETROの「米国アニメ市場の実態と展望(輸出促進調査シリーズ) 2006年3月」を見ても明らかだ。
このJETROの資料は、素人が見てもわかりやすくまとまっていて、とても面白い。当ブログの「ヨーロッパのアニメ・マンガ人気:東京国際アニメフェアのシンポジウムより」というエントリーでも東京国際アニメフェアでJETROの海部氏が行ったプレゼンをほんのちょっとだけ取り上げたことがあったのだが、そのプレゼンも時間が無い中、とてもわかりやすいものだった。まだ全部をちゃんと読んだわけではないので、後日このJETRO資料だけ取り上げて、別エントリーを書きたいと思う。
話はそれたが、アニメ!アニメ!さんの上の疑問に対する考察はこうだ。
「アニメ・エキスポ」を見る限り、ファンの人種的拡大が見られる。つまり以前はアニメファンとして目に留まる機会の少なかった人種が多くコンに参加するという変化が見られた。そこで、
同様に現在の参加者の増加は、特定人種に依存する隙間市場から一般市場への展開と言える。つまり、市場を構成する人種の広がりという面で、アニメはより一般化しつつある。
AX2006はアニメがこれまでの枠を打ち破り、あらたな段階に入りつつある兆しが表れている場所なのである。そして、アニメ市場の不振は、人気とはまた別の要因で説明することが必要だといえるだろう。
アメリカでのアニメやマンガのファンの人種構成については、日本ではあまり見ることがない記事だが、アメリカでは以前からよく議論されていた。これは日本のアニメ・マンガに限ったことではなく、アメリカのコミックスの研究でも人種の問題は珍しいトピックではない。
アニメではないけれど、手元にある2003年「『SHONEN JUMP』愛読者カード結果」による資料によると「北米版ジャンプ」読者の人種構成は、
人種 | 読者割合 |
---|---|
白人 | 60% |
アジア系 | 12% |
ヒスパニック | 8% |
黒人 | 5% |
その他 | 14% |
実際のアメリカの人種構成(↓下の表)と比べると、2003年はその特徴は明らかだった。
人種 | 割合 |
---|---|
白人 | 62% |
アジア系 | 4% |
ヒスパニック | 16% |
黒人 | 15% |
その他 | 3% |
しかしアニメ!アニメ!さんのリポートによると、状況はかなり変わってきているようだ。
個人的にはアニメ!アニメ!さんの「アニメ市場の不振は、人気とはまた別の要因で説明することが必要だといえるだろう。」と言う意見は、目からウロコだった。わたし自身が梅田望夫氏の『ウェブ進化論』を読み終わったばかりなので特に感じるのかもしれないが、消費者による消費行動の変化だけでなく、アニメの販売形態や、業界の利益をあげる仕組みがドラスティックに変わる時期が来ているのかもしれないなぁ。
(↑今更こんなこと言うな、というツッコミは許してやってください。)
追記:アニメ!アニメ!さんの記事
「アニメエキスポ2006 参加者史上最高41,000人(7/5)」
↓アフリカン・アメリカンの興したコミックス出版社で、今はコミックス部門は閉鎖してしまったMilestone社を中心に、アフリカン・アメリカンを主人公にしたスーパーヒーローものとそのクリエイター、そしてファンに焦点をあてたコミックス研究本。
Black Superheroes, Milestone Comics, and Their Fans (Studies in Popular Culture)
- 作者: Jeffrey A. Brown
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