米マンガ出版社から日本のゲームデザイナー・イラストレーターの鈴木康士氏の新作マンガ発売。
不況に苦しむアメリカの出版業界で唯一売上を伸ばしていると言われるグラフィック・ノベルとマンガ。近年は少年マンガだけでなく、少女マンガも飛躍的に売上を伸ばし、アメリカでもマンガが徐々に“濃いファン”だけのものではなく、一般にも受け入れられつつあるようだ。
そんな中、アメリカのマンガ出版社も日本や韓国などマンガを大量に出版している国からマンガのライセンスを買うだけでなく、自前でオリジナルのマンガを出版するところが増えている。背景には日本のマンガのライセンス料の高騰などもあるだろうが、マンガが一般に浸透すればするほど、マンガ家を目指す人が増えるのも当たり前と言えば当たり前。
マンガファンとしては、単純に面白いマンガが沢山増えるのはとても嬉しい。米産マンガには日本のマンガと全く同じようなものもあるが、微妙にテイストの違うものも多い。最近更新が滞っている上に、アメリカ発の紹介したい記事もいっぱいあってなかなか着手できていないけれど、個人的に面白いと思った米産マンガをこのブログでも時々紹介していきたいと思う。
今回はDrMasterというアメリカのマンガ出版社が出版を発表した初のオリジナルマンガの話。ちなみにDrMasterは『月姫』『宇宙のステルヴァ』『お願い☆ツインズ』などを出版している。
ICv2の記事「DrMaster社がTVゲームのデザイナーとマンガで契約("DrMaster Signs Vid-Game Designer for Manga")」(10月20日)とANNの掲載のDrMasterのプレスリリース(10月19日)よりまとめ。
アメリカのマンガ出版社DrMasterが初のオリジナルマンガ出版で、TVゲーム『罪と罰〜地球の継承者〜』『斑鳩』のキャラクター・デザインで知られるD-Suzukiこと鈴木康士氏と契約した。DrMaster初のオリジナルはサムライ・ファンタジー『Purgatory Kabuki』。
『Puragatory Kabuki』は、死後の世界に落ちた主人公の侍イマノ・ツルギが、なんとかしてそこから抜け出そうとするが、そのために死んだ戦士1000人の刀を集めなければならなくなるというストーリー。鈴木氏はその物語に日本の伝説と神話を組み入れ、浮世絵を思わせるスタイルの絵でアクションたっぷりのマンガに仕上げる予定だ。
DrMasterはこの『Puragatory Kabuki』を2007年後半に200ページに及ぶグラフィック・ノベルとして出版することにしている。そして紙媒体として発売するのに先だって「Direct2Drive」(←ゲームファンにはお馴染みの、ゲーム・映画・アニメなどのダウンロード販売をするサイト)で最初の50−60ページをダウンロード販売する。
『Puragatory Kabuki』の表紙はこのページで。
今までも北米のマンガやコミックス出版社から、絵を日本のマンガさんが担当し、ストーリーをアメリカ人のライターさんという組み合わせでオリジナルマンガが出版されることはよくあった。例えばTokyopop社の『プリンセス・アイ物語』では、原作はDJ Milky氏とコートニー・ラブ氏原案(ということになっている)で、マンガは日本人の鯨堂みさ帆氏。
↓『Princess AI』1巻。
Princess Ai Volume 1: Destitution
- 作者: Misaho Kujiradou,D.j. Milky
- 出版社/メーカー: TokyoPop
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: ペーパーバック
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今回の『Puragatory Kabuki』の場合、原作と絵の分担などのところは記事からはハッキリしないが、ニュアンスとしては鈴木氏の新作マンガがDrMasterから出版という受け止め方でよさそうな感じだ。もし仮にDrMaster側から用意した原作無しとしたら、日本のマンガ家さん(鈴木氏の場合はイラストレーター・ゲームデザイナーとお呼びした方がいいかもしれないが)の向こうの出版社への参加の仕方としては珍しい形になるかも。
それに紙媒体のマンガ発売前に、ダウンロードで一部を販売するというのもなかなか新しい試みだと思う。このダウンロード販売が紙媒体の売上にどう影響するかも、興味深いところだ。