PEACH-PIT氏の『DearS』を巡って、アメリカの図書館でプライバシー保護問題。

アメリカ・ミネアポリスの地方紙The Pioneer PressのTwinCities.com記事で、日本のマンガの性的描写を問題視した母親とそのマンガを14歳の息子に貸し出した図書館のことが話題になっている。

とは言え、誤解が無いように初めに書いておくと、この記事が主に話題にしているのは、日本のマンガの性的描写に対する糾弾というようなものではなく、図書館のプライバシー保護とレイティング問題。

記事によると、少年の母親は息子の部屋で『ローゼンメイデン』などで知られるPEATCH-PIT氏の『DearS』を見つけ、その性的描写を問題視し、自分の息子が借りたものかどうかを確認しようと図書館に電話をした。しかし図書館はプライバシー保護を理由に回答を拒否。そこで母親は新聞社に連絡。新聞社が図書館と連絡を取り、母親自身のIDカード、そして息子である少年の図書館カードの両方があればその本がその図書館カードで貸し出されたかどうかを、IDカードを提示した本人には図書館から明らかにできることがわかった。

結果『DearS』は図書館からその少年に貸し出されたものであることがわかり、母親もそれを聞いて一応満足したものの、図書館で貸し出す本にレイティングを付けるべきだと主張。それに対して図書館は知的自由を保障する権利を主張してその主張を拒否した。

以上が記事の簡単な要約だ。

フリーライターで、自分も母親であるブリジッドさんが書いていたように「母親はなんで息子に“この本、図書館から借りてきた?”って直接聞かないかな?」という疑問はさておき、米コミックス専門誌『Comics Journal』のブログで述べられているように「このままアメリカでマンガの人気があがっていけば、こういう母親からの不満を聞く回数は増えていくだろう」というのは、容易に想像がつくこと。

日本での多くの図書館と異なり、アメリカでは図書館に置かれるマンガはかなりの数にのぼる。流通の関係で図書館に対して売られたマンガの数字が表に出ることはなかなかないものの、図書館は子供たちにとってマンガに触れる場所でもあるのだ。

かつてこのブログでも「米ロスアンジェルス郊外の図書館からマンガ研究本が「わいせつ」として撤去」などを取り上げたが、図書館におかれたマンガの問題は、今後もなくなることはないだろう。

ところでこちらのサウス・フロリダの地方紙のサイトの記事では図書館員の人たちが子供たちに、図書館には本以外にも色々あることを知ってもらうために、アニメのコンベンションのようなものを図書館で開いたことを知らせている。コスプレをした子供たちを含むアニメファンが千人以上が集まって、DVDを一緒に観賞したりゲームをしたり、予想を超えての大盛況で、来年も行われることになりそうだという。

↓英語版『Dears』1巻。

Dears 1

Dears 1