『ネギま!』アメリカ・デビュー前夜の「おしり・横乳」修正騒動

前回のエントリー(当ブログの7月29日の記事)の『魔法先生ネギま!』関連の記述に関しての追記。

記事の筆者ソロモン氏が『ネギま!』を「アメリカではこれを児童の性的虐待を示唆するもの、と捉える人もいるかもしれない」と書いていた件だ。ANNの掲示板ではソロモン氏に反対する意見が多かったので3つほど記事の要約と一緒に載せたのだが、そのうちの一つ「児童の性的虐待って見る人はいるか?キャラ全員が法定年齢に達しているだろ?」という意見のGatsuさんは「法定年齢」に関しては勘違いしている可能性が高い。アメリカは州によって法定年齢が異なるので一概には言えないが、連載当初満10歳だったネギは、どの州法でみても間違いなく法定年齢に達していないからだ。(アメリカの「法定年齢」に関して間違った認識を広めるといけないと思い書き足しておく事にした。混乱させてすいません。)ソロモン氏の推測の正否はともかく『ネギま!』がアメリカで「児童の性的虐待」で問題になったという事は今のところないようだ。しかしマンガの性的描写に対して日本よりアメリカの方が格段に厳しいのは事実である。*1

「おしり・横乳」修正騒動Negima, Vol. 2 : Magister Negi Magi
マンガはアメリカでの出版の際に修正されることが珍しくないが『魔法先生ネギま!』の場合は同じ作家の『ラブひな』がアメリカでかなりの人気だったためその修正を巡ってちょっとした騒動が起こった。この騒動は『ネギま!』がアメリカで発売される前の去年の2月のことなので記事としては古いが、アメリカと日本のマンガを巡る状況の一つの違いとしてその時の事を簡単にまとめてみようと思う。


アメリカで『ネギま!』が出版される前に北米大手アニメサイトAnimenation*2こんな記事が載った。

漫画家・赤松健氏が自分のサイトの日記(2004年2月22日)に「ネギま!アメリカでの発売で行われた検閲の度合いにショック(shock over the degree of censoring...)を受けた」と書いている。

他のニュースサイトもこの件を報道し、掲示板などで議論が巻き起こった。

その検閲に関して出版元のDelReyが業界サイトICv2の問いあわせに応じた時のコメント(要約)。

絵の修正がなされるのは208ページ中10コマだけであり、赤松氏にも了解を得ている。修正はストーリーには何の影響も無いし、出版社として赤松氏の素晴らしい作品をなるべく多くの書店におきたいという編集上の決定で、作品のクオリティにその修正が影響しないよう十分配慮している。

しかしDelReyのコメントでは事態は収まらなかった。掲示板などの反応を見ると、赤松氏ファンの「オリジナルを読みたい」という意見以外にも、「検閲」という言葉に反応したもの、『天地無用』のアメリカ版のために「裸に水着を書き加えたり、酒をお茶に変えた」と言った梶島正樹氏を引き合いに出してDelRoyの判断を支持するもの、マンガの“ファン・サービス”が無くなっても本質は変わらないから修正を受け入れるというもの、「ショックを受けた」赤松氏に同情するものなどなど様々な意見が交わされた。

ところで当の赤松氏の日記はこうだ。
(2004年2月22日赤松健氏のオフィシャル・サイトの日記から)

アメリカ版の「ネギま」の修正の凄さにビックリ。(^^;)
「おしり→パンツはいてる」、「横乳→タオル巻いてる」など、昔の韓国
並みに厳しいです。やはり中学生の性的シーンということで、相当配慮し
てあるみたい。今はヨーロッパより厳しいんじゃないかなぁ。

赤松氏の日記のニュアンスは、まさに“ロスト・イン・トランスレーション”。翻訳をしているものとして他山の石にすべき状況である。*3

結局DelReyは騒動を受けて修正を中止。オリジナルのまま『ネギま!』は発売された。しかし結局この「修正中止」のため『ネギま!』には「16歳以上の大人向け*4」のマークが付き、店頭に並ぶ時はビニールで密閉されて売られることになった。『ネギま!』の売上は好調のようだが、この16歳以上指定マークとビニ本仕様がその売上に影響を与えたことは間違いないだろう。

そして、この『ネギま!』のオリジナル出版後も桂正和氏の『アイズ』の少女の乳首が消されてVIZから出版されるなど、修正版が出版されるケースは無くなってはいない。

*1:当ブログの7月13日のエントリーとその補足の18日のエントリーに最近の事例を載せている。

*2:日本ではAsk John のコーナーで有名かもしれない。

*3:ただANNニュースサイトではかなり赤松氏の日記のニュアンスを伝えていたと思う。

*4:For Mature Audiences Ages 16+