「アニメ・海賊版・利益:ファンサブとの共存」CNNの記事より。

CNN Money"Animé, piracy and profits"(12月13日)より。

エンターテイメント業界が軒並みその業績を落とす中、業績を伸ばしている米アニメ業界。その秘密は海賊版を取り締まるのではなく、そこから情報を得て販売戦略に活かすというユニークな方法にあった、という趣旨のCNNの記事要約。

メインストリームのエンターテイメント業界が知的所有権の保護をめぐって、いたちごっごを続けている一方、あるニッチマーケットはその問題を回避する新たな方法を考え出した。アニメとして知られる日本的スタイルのアニメーションとその印刷版マンガがその市場である。

両者の小売市場の売上はたった6億2500万ドルと確かにニッチだが、2002年から2004年にかけて13%上昇するなど急成長を遂げている。しかしそれ以上に、この業界の成功はハリウッドができないことをすることによって維持されてきた。ファンを恐れるのではなく味方に引き入れる、ということだ。

今年ハリウッドの興行成績は、まずまずだった去年から一転して7%ダウンしている。DVDの売上は2006年度以降下がり続けると予想され、TVネットワークの視聴率は18歳から49歳の年齢層で去年より7.4%落ちている。

しかし“オタク”として知られるアニメとマンガのファンは増え続け、お金を落とし続けている。(日本では何らかの理由で否定的な意味合いを含む“オタク”も、はアメリカでは単にアニメ・マンガファンのことである。)

消費者を遠ざけずに商品を買い続けてもらう。このニッチマーケットはエンターテイメント業界のその稀有な例となっているのだ。

ハリウッドの大手スタジオや出版会社とは違い、会社を最新の事情に合わせて常に変えていくアニメ会社はシリコン・バレーの新興企業のようだ。会社の方針は商品を渡すべき人々に届けること。それがDVD、携帯電話、ダウンロード用ソフトであろうと消費者に届けて次に何が起こるか観察する。そしてもしファンが共有ソフトを使い始めたら(実際使っているのだが)、弁護士を放つことはせずにその海賊行為を自分たちの利益になるよう考えたのである。

「会社が死ぬも生きるも、良い製品を送り出すだけでなくファンの間で何が一番人気か最先端の情報を把握していることにかかっている」こう話すのは米マンガ出版社最大手TokyoPop編集長で共同創立者のマイク・カイリー氏。

そうするために彼らがとった方法の一つは、彼ら自身を廃業に追い込む可能性のあるネット上の違法アニメを大目に見ることだった。そして違法アニメの交換を大目に見ただけでなく、交換するグループを競合させた。どのグループが一番良い字幕版を作っているか見るためである。

“ファンサバー”と呼ばれる違法アニメ字幕版製作者たちは共同で何時間もかけて30分の番組を英語圏の人々にために作成する。このプロセスは、日本の視聴者がアニメを録画しネットに転送するところから始まり、次に世界中のバイリンガルのファンたちがセリフを翻訳しBitTorrentというソフトを使ってネットにアップする。

アニメ会社はネット上でどの番組が人気がチェックする。ファンサバーをアメリカで成功する作品の最初の指針として利用するのだ。しかしアメリカのアニメ会社がある番組のライセンスを一旦取得すれば、多くのファンサバーは厳しい行動規範に従って行動し、ネット上からその番組のファンサブ版を取り除く。こうやってアニメをアメリカに持ってきたアニメ会社はそのDVDで利益を上げることができるようにしているのだ。

今までのところこのやり方は上手く行っている。去年ボルティモアではコスプレをした2万2千のアニメファンが「オタコン」というアニメ・コンに55ドルの入場料を払って参加した。3日間のイベントの2日目に入場券は売り切れ、チケットを売るダフ屋まで現れた。以前は男性が殆どだったが今では女性はファンの半分を占める。

コスプレのファンというのはむしろファンの中でも“エリート”グループだと思うかもしれないが、実際アニメはメインストリームに向かいつつある。カトゥーン・ネットワークの深夜時間帯アダルト・スイムは18歳から24歳のケーブル視聴率で今年殆どトップを維持していた。

どうして人気があるのか?アダルト・スイムなどで放送されるアニメはソープ・オペラのような魅力を持っている。52話にも及ぶ長いストーリーの中でキャラクターは死に、愛し合い、ばかげたことをしたりする。

マンガは2002年以来その売上を2倍に伸ばしその数字は2004年には1億2500万ドルに達した。このマンガに対する興味の拡大にあわせCosmoGirl(10代向けの雑誌)では去年からマンガを掲載している。CosmoGirlの編集主幹アン・ショケットは言う。「好きな本はマンガで、好きなことはマンガを読むこと、と少女が言うのをよく聞くようになった。少数の変わり者だけではなく多くの少女たちが自分たちのためにマンガを描いている」

アメリカのアニメ売上の4分の1を占めるAD VisionのCEOジョン・レッドフォードはGametronixというAD Visionの前身を1991年に創設した。日本からTVゲームを輸入し店頭で売ったが、翌年『魔物ハンター妖子』アニメのライセンスを約5万5千ドルで買いアメリカで販売すると90日間で元手を回収することができた。

それ以来AD Visionは700作品以上をDVDで発売し収入の90%をDVDの販売で得ているが、レッドフォードはファンが望む形でアニメを発売することに決めている。「ビデオ・オン・デマンド方式で、ADVのサイトから一つのエピソードを4ドルで買えるようにするつもりだ」

レッドフォードはファンをハッピーにすることが大事だと考えている。「コアなファンはとても熱狂的だ。ファンは仲間として協力してくれる。マーケティングに1ドルだって払う必要はない。ただファンと友達になればいいんだ」

魔物ハンター妖子 DVD-BOX

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当ブログ関連エントリー北米アニメ販売会社、ファンサブグループに警告文(追記:「米ジャンプ」発売元のファンサブへの見解)。