世界に広がるMANGA(2)。
『ジャパン・タイムス』の記事「Manga by Any Other Name is…」の要約を載せた前回のエントリー「世界に広がるMANGA(1)」からの続き。「(1)」を読んでからどうぞ。
エンターブレインのマンガ部門で編集局長を勤める業界のベテラン、岩井好典氏によると、講談社を含め幾つかの出版社では非日本人マンガ家によるマンガの掲載を5年ほど前から試していた。しかし爆発的なヒットというわけにはいかなかった。講談社の雑誌『モーニング』はその試行錯誤の場であったが、現在のところ非日本人作家によるマンガを掲載するのを止めている。
日本のポップ・カルチャーサイト「Junkmagnet.com」を運営するニコラス・フリーマン氏は、Tokyopopのような出版社が非日本人マンガ家によるマンガ様式の作品を出版している一方で、中国、韓国産のコミックスもアメリカで広まってきている、と言う。ただ少なくとも「日本産が今でも標準と見なされている」ことに変わりはない。
日本のマンガほどの知名度は得ていないものの、韓国産マンガ「マンファ」も米市場にかなりの数が入っている。ミン-ウー・ヒュン氏の『Ragnarok』『Priest』は2003年、2004年と、国際的知名度を得たが、ICv2のトム・フリン氏によると、韓国産マンガはもはや人気作品となるのは難しい。それと言うのも、日本の人気マンガ作品の多くのようにTVアニメがアメリカで放送されてはいないからだ。「TVゲームやオンラインゲームの人気で状況は変わるかもしれませんが」と、フリン氏。「韓国は『ウォークラフト』のようなマルチ・プレイヤーのオンラインRPGゲームの製作がとても上手ですからね」
↓ミン-ウー・ヒュン氏の『Priest』。映画化の企画も進行中。1999年に遡ると、エンターブレイン社から出版した梁慶一氏の『死霊狩り』が大人気だったが、岩井氏は海外のマンガ家と一緒に仕事をすることに関して様々な困難があったと述懐する。『死霊狩り』の場合は梁慶一氏のアシスタントの2人が兵役に従事しなければならなくなったため、連載を止めなければならなかった。
- 作者: Min-Woo Hyung
- 出版社/メーカー: TokyoPop
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: 梁慶一
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2001/05
- メディア: コミック
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非日本人マンガ家にとってコミュニケーションに伴う困難はより日常的な問題だ。ロシア生まれのカナダ人であるスヴェトラーナ・クマコヴァ氏は現在、10代向けの『Cosmopolitan』である『Cosmogirl』誌に連載を持っているが、マンガ純粋主義者たちは彼女の作品に否定的だと言う。「日本人ではないマンガ家を敵視する人もいます。でもわたしの国籍が何であれ、支援してくれる人もたくさんいるし、マンガ様式のわたしの作品を読みたがってくれる人もいます」
↓スヴェトラーナ・クマコヴァ氏の『Dramacon』。人生初めてのアニメ・コンで右往左往しながら、そこで出会ったマットと喧嘩しつつも彼に惹かれていくクリス…という正統派(?)恋愛モノ少女マンガです。(『Cosmogirl』誌に連載しているのは別の作品。)
- 作者: Svetlana Chmakova
- 出版社/メーカー: TokyoPop
- 発売日: 2005/10/30
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その困難がどのようなものであっても、マンガは世界中で人気を博している。より多くの若者がこのメディアを学び始め、そしてその中の少数は、その起源の国・日本で学ぼうと考えている。現在日本では、20の高等教育機関が、そして100の専門学校がマンガに関連したコースを提供している。
この中で最も知られているものの一つが、マンガに関して唯一学位を出す京都精華大学だろう。そのコースを担当する牧野圭一教授は今、20人の外国人の生徒を教えている。ほとんどが韓国人だが、中国や台湾から来た生徒もいる。日本人の教え子の一人が手塚治虫賞を受賞したこともあり、牧野氏は外国人の生徒の中から素晴らしいマンガ家が登場するのも時間の問題だと語った。
牧野氏は海外での日本マンガ人気を進歩として肯定的にとらえているが、更なる発展の余地はまだたくさんあると考えている。「日本ではみんながマンガを読みます。全ての年齢の、全ての職種の人が、です。でも今はまだ海外ではコアなファンだけがマンガを読んでいます。そのことが変わるには時間がかかるでしょう」
非日本人のマンガ家の新世代の教育に関わっている人物に、グレン・カーディー氏がいる。世界で100万部以上売りあげた『How to Draw Manga(マンガの描き方)』の世界独占ディストリビューターであるJapanime社のCEOだ。カーディー氏はオンラインでも「マンガの描き方講座」を開いていて、向上心あるアマチュアのマンガ家たちの作品を批評する場となっている。
↓『How to Draw Manga』シリーズの1冊。How to Draw Manga: Bishoujo/Pretty Girls
- 作者: Hikaru Hayashi
- 出版社/メーカー: Graphic Sha Pub Co
- 発売日: 2001/02/01
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埼玉の会社からの電話インタビューでカーディー氏は「マンガに対する興味はとても強いと思います」と答えた。「講座が開いてから18ヶ月の間に生徒は150人、そのうちの一人は長崎のプロの下で現在勉強中です」
カーディー氏の会社の出版する「Manga Univesity」レーベルでは、マンガで日本語を教える『Kanji de Manga』シリーズも出版している。10万部以上を売上げ、この成功はマンガが日本語と日本文化の一般の興味をその国境を越えて刺激している証だ。
↓Japanime発行の『Kanji de Manga』シリーズのボックスセット。
- 作者: Glenn Kardy,Chihiro Hattori
- 出版社/メーカー: Japanime Co Ltd
- 発売日: 2005/12/14
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ただ、日本人自身が日本特有のこのメディアの外国人によって再解釈された作品を理解するにはまだ時間がかかるかもしれない。
<先輩の国でその技術を鍛えた、非日本人のアーティストたち3人を紹介>
神戸在住でバンコク生まれの29歳。吉本ばななのカバー・アートを担当したり2006年の横浜トリエンナーレにも出展する。1998年に月刊誌『IKKI』でデビュー。コロンビア・レコードのサイトに毎日コミックスを提供。(HPはこちら。)
- 作者: ウィスット・ポンニミット,ワチラポーンリムビプーワッド,木村和博
- 出版社/メーカー: マガジン・ファイブ
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: コミック
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日本在住で、今年の1月に死去されたセス・フィッシャー氏。アメリカの2大アメコミ巨頭DCとMarvelの両方で、イラストレーター、ペンシラーとして働いた。『バットマン』『ファンタスティック・フォー』といった作品のほかにDCより『Vertigo Pop! Tokyo』を発表、この作品はイギリスのカルチャー・マガジン『The Face』より2003年のベスト10コミックスの一つに選ばれた。フィッシャー氏は長く日本に住んでいたものの、そのスタイルにそれほど強い日本マンガの影響を見ることはできないが、『Silver Bullet Comicbooks』とのインタビューで「日本から大きな影響を受けた」と語っている。(HPはこちら。)
Fantastic Four / Iron Man (Fantastic Four (Graphic Novels))
- 作者: Zeb Wells,Seth Fisher
- 出版社/メーカー: Marvel
- 発売日: 2006/03/15
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フランス人のボワレ氏は2001年に「ヌーベル・マンガ」運動を東京で始めたことでも知られている。それは日常生活を描くマンガを伝統的なフランス語圏のシークエンシャル・アートスタイルと融合させたものだ。ボワレ氏の奇抜なスタイルは、写真やビデオとイラストを組み合わせ、コミックスのコマのようにつなげたもの。半自伝的物語にユーモアを合わせた作品、1997年の『東京は僕の庭』『Demi Tour』で知られている。(HPはこちら。)
- 作者: フレデリック・ボワレ,関澄かおる
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2001/08
- メディア: コミック
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『ジャパン・タイムス』の記事は以上です。
ところで。。。
記事に登場するJapanime社のCEOグレン・カーディーさんは、スポーツがお好きな気さくで明るいアメリカ人さん。『Kanji de Manga』シリーズは、ハットリ・チヒロさんの絵がカワイイので、日本語を教えることに興味を持っているなら見て損は無いです。
例えばこんな感じでマンガになってます。『Kanji de Manga』2巻より。
「肉」 例)肉親、肉球、筋肉。
女の子 「肉きゅう、きもちいい!ぷにぷにしてる!」
にゃんこ (いいめいわく、なんだって。。。)Girl 「Your paws feel so good! So squishy!」
Cat (You're really starting to get on my nerves...)
「ぷにぷに」はsquishyかぁ。。
さてちょっと横道にそれたけれど、『ジャパン・タイムス』の記事は今回で終わり。でもなぜか「世界に広がるMANGA(3)」に続きます。。。