英語版『鋼の錬金術師』8巻、一部修正アリ。

米大手アニメサイトであるアニメ・ニュース・ネットワーク(ANN)によると、VIZ Mediaから出版されている英語版『鋼の錬金術師』8巻に一部絵の修正が行われたようだ。

修正が行われたところは、日本版だと8巻の66ページ。ホムンクルスであるグリードがキングブラッドレイ大総統にやられて、生みの親であるホーエンハイム似の「親父」のところで十字架に磔にされ天井からぶら下げられているシーン。

英語版では、グリードのポーズは同じだが、磔にされているのが十字架でははく、一枚の岩のようなものに変更されている。

編集前と編集後のANNによる比較ページはコチラ

VIZでは、ANNの質問を受けて、

行われた微細な編集は北米市場で発売する上でその基準に合うようにとされたものです。わたしたちの行う編集は全て、マンガ家の了承と意見を得てから行われています。

と、答えている。

9月11日にこの編集を伝えたANNの掲示板では既に350を超える書き込みがなされ、ざっと読んだ限りでは編集を非難する書き込みが多いものの、宗教的な点でVIZの編集に理解を示すものもかなり多い。

業界サイトICv2でもこの件を「『ハガレン』編集に対するVIZの回答("Viz Responds to 'FMA' Edit: Reduced Religious Reference")(9月19日)」で取り上げていて、掲示板の意見を「賛否両論に分かれている」とまとめている。

ICv2から編集理由を尋ねられたVIZはANNへの回答と同様の返答をし、更にこう付け加えている。

この件についていただいたご意見の多くが、ストーリーに変更があったわけではなく、さらに修正された部分がかなり少ないので、この編集は問題ないというものでした。ほとんどが、マンガ家によって了承されたという事実を尊重し、読者は国によって様々だということを理解してくれています。

VIZは以前、桂正和氏の『I's』に出てきた乳首を★マークで隠したことがあり、ファンの不評を買ったことがあった*1

編集問題で有名なのはDC/CMXから出版されている『天上天下』。編集の数が多いためこちらはかなりの論議を巻き起こした*2

最近ではDel Reyから出版されている『エアギア』1巻で、レイプを暗示させる言葉が英語版で削除されていることが発覚。アニメ関連の大手掲示板であるAnimeonDVDの掲示板でそのことがレポートされると、ファンの怒りの書き込みが殺到。しかしDel Rey社マンガ・ディレクターであるダラス・ミダウ氏が掲示板に現れ「編集するという判断をしたのは自分で、その判断は間違っていた」「増刷分からオリジナルに忠実な翻訳に変える」「2度としないと約束する」と書き込むと、その後は「ファンの意見を聞く出版社」として、Del Reyとミダウ氏を支持し、『エアギア』を絶対買う!と表明する書き込みがほとんどとなった。

↓今回問題のシーンが登場した『鋼の錬金術師』英語版8巻。

Fullmetal Alchemist, Vol. 8

Fullmetal Alchemist, Vol. 8

↓Del Reyから出版されている『エアギア』英語版1巻。レイプを暗示させる言葉がなくなっている。
Air Gear 1

Air Gear 1

追記:
米アニメサイトのアンケート「英語版『鋼の錬金術師』8巻で行われた“修正”をどう思いますか?」

*1:ICv2の記事「VIZ、『I's』の乳首を隠す("Viz Covers Up 'I''s': Stars Over Nipples")2005年3月31日」より。

*2:当ブログの記事「米業界サイト選出:2005年度 マンガ・オブ・ザ・イヤー」の「論争・オブ・ザ・イヤー:マンガの検閲問題」参照。