アメリカで『ワンピース』アニメ打ち切り、『テニスの王子様』『メルMAR』放送開始。

カトゥーンネットワーク(CN)の「トゥーンナミ」(日本のアニメやアクション系カトゥーンを放送する時間帯)HPなどで確認されたところによると、『ワンピース』のアメリカでのライセンスを持つ4キッズ・エンターテイメント(4Kids Entertainment)のマーケティング・ディレクターが「『ワンピース』の吹替え版の製作を打ち切る」と語った。

4キッズ・エンターテイメントは『ワンピース』の104話まで吹替え版を製作したが、現在のところアメリカで放送されたのは78話まで。地上波のFOXテレビでの今後の『ワンピース』の放送予定はなくケーブルのCNでも放送予定はないため、『ワンピース』はアメリカではもうテレビで見ることはできない。

これによって、4キッズの『ワンピース』ライセンス期限の2009年までは他社がライセンスを4キッズからサブ・ライセンスとして借り受けるか(←契約内容が公けにされていないのでこの点は正確にはわからない)、期限の切れた2009年以降に他社がライセンスを取得するかしない限り、『ワンピース』が再びテレビ放送されることはなくなった。

日本でアニメ『ワンピース』は12月3日の放送で288話となり7年目に突入、劇場映画も8作目が来年公開、そしてマンガも連載9年目の大人気作。この『ワンピース』のアメリカでの事実上の失敗については、放送前の期待が大きかったタイトルだけに、ファンの間でも議論が多くなされている。

まず『ワンピース』ファンが熱く主張するのが、その「吹替え版」の声優と編集のひどさ。声が合っていない、セリフが変えられている、暴力シーン・タバコのシーンは全部カット、そのつじつまを合わせるためのストーリーの改変、等など、多くのファンがその4キッズの「吹替え版」によって作品が台無しにされたと感じているようだ。(当ブログの2005年8月9日の記事「黒人海賊?白人海賊?『ワンピース』アメリカTV放映時の改変」でその編集について一部取り上げています。)

今回の『ワンピース』打ち切りを実は一番喜んだのはその『ワンピース』の熱いファンたちかもしれない。大手アニメニュースサイトANNの掲示板では、“これ以上愛する『ワンピース』が切り刻まれなくてすむ”という安堵の声が多く見られた。

更に4キッズが考えた『ワンピース』対象年齢が『ワンピース』を最も楽しむことができる年齢層より低すぎたという点も指摘されている。『ワンピース』の地上波FOXでの放送は土曜日の午前中。土曜日の朝はアメリカでは特に小さな子供向けの時間帯だ。実際にCNで『ワンピース』が夜の9時代に放送された時にはそこそこ良い視聴率を取っていたため、この指摘は的はずれではないかもしれない。(当ブログ2005年12月2日の記事「『金色のガッシュベル』『ワンピース』『ナルト』11月米ケーブルTV視聴率好調。

低年齢層をターゲットと限定してしまったため、数多くの編集が必要となり、結局作品の魅力を損なってしまった、という可能性は高い。しかしもちろん、ファンの怒りが全て4キッズに向かっているとは言え、『ワンピース』低視聴率の理由を全て4キッズの吹替え版に求めるのは間違いだろう。他にも文化的なものなど、色々な要因があるに違いない。

結局、DVDを発売するVIZ Mediaはその視聴率の低迷を受けて『ワンピース』の「ノーカット完全版」DVD発売を見送り。今回の吹替え版製作打ち切りでその「吹替え版」DVDも最後まで発売されることはない。『ナルト』がコアなファン向けの「ノーカット完全版」と一般視聴者向け「吹替え編集版」の両方のDVDが発売されたのとは対照的だ。

12月に『ワンピース』がCNから去るのとちょうど入れ違いに、今度は『テニスの王子様』と『メルMAR』がCNで放送開始される。特にスポーツものは難しいと言われるアメリカだが、スポーツと言っても『テニスの王子様』の魅力はスポーツを超えた予測不可能な展開にあったりするので、この作品がどう受け止められるか興味深いところ。かつてアメリカでは『新機動戦記ガンダムW』が“美少年キャラ”でアメリカの女性アニメファンを一気に増やしたように、日本でも女性ファンの多い『テニスの王子様』も更にアメリカで女性アニメファンを増やすのに貢献するかもしれない。

(追記:業界サイトICv2によると、『ワンピース』マンガは健闘しているらしい。ICv2の選ぶ今年のトップ15マンガ作品に入っているということだ。)
↓英語版マンガ『ワンピース』。

One Piece Vol.1: Romance Dawn (One Piece Series)

One Piece Vol.1: Romance Dawn (One Piece Series)

↓アニメ『テニスの王子様』。