イギリスでのマンガ人気。
Antara News 「イギリスがとうとう“マンガ革命”に追いついた("Britain finally catches up with 'manga revolution'")」(6月9日)より要約。
インドネシアに拠点を置く通信社Antara Newsのロンドン支社からのレポート。イギリスでのマンガ人気について伝えている。
イギリスの業界関係者によると、日本のマンガはイギリスで徐々にではあるが人気が出始めたようだ。マンガは現在では出版業界の中でも最も成長が著しい分野となっている。
マンガは学校や公共図書館でも存在感を増していて、日本政府もマンガがイギリスに他の日本のポップカルチャーに興味を持つきっかけとなることを期待している。
イギリスの若者の多くは日本を“クール”だと思い、アニメ、PCゲーム、おもちゃといったものを通してマンガに惹かれている。しかし反対にイギリス産コミックスの売上は落ちているのが現状だ。イギリスのコミックスは新味に欠けると言う批評家もいる。短く簡潔で、日本のマンガほどキャラクターの造作は誇張されていない。
マンガを読むことに関して言えば、イギリスはアメリカ、フランス、ドイツにかなり遅れをとっている。専門家は、主に二つの理由をあげる。一つ目は、イギリスには大人がマンガを読む伝統が無いこと。一般の見方では、マンガは過度に単純化されていて、読者の価値観を揺さぶったりはしない。
二つ目の理由は、出版業界が現在までのところかなり旧弊であり、マンガのような新しいジャンルを取り入れるリスクを冒すことに消極的だということだ。
しかし、数字をみると状況は変わってきている。ニールセン・ブックスキャン(Nielsen BookScan)によるデータでは、グラフィックノベルとマンガの売上は2001年の10万部(280万ドル)から2005年には60万部(1030万ドル)まで上昇した。
イギリスではTitan BooksとTokyopopがマンガの人気出版社である。2005年8月には、Gollancz Mangaがイギリスで最初の大手マンガ出版社となり、Gollancz出版の『遊戯王』は大変な人気を博した。
Tokyopopのイギリス販売ディレクターであるデニス・マクガークは言う。「現在わたしたちは波に乗っている感じで、しかもイギリスでこの人気は始まったばかりです。アメリカでは7年間成功を収めてきました。一人当たりで換算すると、イギリスではアメリカよりうまく行っています」
マンガへの興味の高まりは、自分自身でマンガを描くイギリス人の若者たちを生み出した。Tokyopopの開いたマンガ・コンテストでは、優勝者の作品は出版されるということで、300作品の応募があった。あるグループはシェークスピアのマンガ版を送ってきた。
ただ多くのイギリス人のマンガ家たちはまだこれからという実力で、多くの作品をネットで発表している。日本のマンガ家たちが得ているような名声と富を、そのうちの誰かがつかむことができるのか、見極めるのは難しい。
実際、熱狂的なファンの中には、日本産のものだけがマンガであり、西洋で作られたマンガを見下す者もいる。
最近は大手出版社もマンガの人気に気づき始め、市場に参入してきた。ハーパー・コリンズは手塚治虫『ブッダ』を出版するし、ランダムハウスは45本の作品を「Tanoshimi」というレーベルでの発売を予定にしている。
ハーパー・コリンズは『ブッダ』の出版で、マンガが文学的評価を得て、マンガが子供だけのものという誤解を変えたいと考えている。現在のところイギリスでのマンガ読者の圧倒的多数は子供とティーンエイジャーだ。将来この若い読者たちがこの読書習慣を持ち続け、更に複雑な物語を求めることが望まれている。
マンガは子供のものという誤解は未だに根強く、その誤解がイギリスの出版社がマンガを扱うのを難しくしているが、状況は少しずつ変わってきているようだ。
Gollancz Mangaの編集ディレクターのサイモン・スパントンによると、「グラフィックノベルとマンガには今も偏見はあります。でも、日本でのマンガの文化的重要性やマンガの世界への普及で、イギリスの出版社もマンガを違う観点で見るようになってきています」
マンガは学校でも読書を促進するものとして使われ、日本に対する一般の認識を高めることにつながるよう期待されている。
マンガ・クラブが設立され、マンガをテーマにしたカリキュラムを設ける学校もある。これは子供たちに読書を推進する視察官たちからも賞賛された。
イギリス中の学校や図書館でのマンガ読書を推進しているルース・ハリソンは言う。「わたしたちはマンガの学校への浸透は成功すると考えていました。でも驚いたことに、その成功は過去2年以上に渡って続いているのです」
マンガ歴史家のポール・グラヴェットは、「マンガが日本とその文化への興味を喚起しています。マンガの中にはたくさん日本文化を表すものが出てきます。良いマンガの中には文化的なものの説明が載っているものもあります。これは興味を刺激するのに完璧なやり方です」
↓記事の中にも登場した、Tokyopopによるマンガ・コンテストの優勝者の作品を集めたアンソロジーのイギリス・アイルランド版。
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ULTIMO SPALPEENさんの6月18日エントリーでもこの話題を取り上げていらっしゃいます。「イギリスでのアニメ・マンガ人気――雑誌「NEO」6月号より」
当ブログ関連エントリー:「ヨーロッパのアニメ・マンガ人気:東京国際アニメフェアのシンポジウムより。」(3月26日)