ニューヨーク・タイムスがCLAMPの紹介記事を掲載。

日米で絶大な人気を誇るCLAMP。今年の夏に行われたアメリカ最大のアニメ・コンベンション「アニメ・エキスポ」でゲストとして呼ばれ、その警備体制やファンの熱狂度で、あらためてアメリカでの人気の凄さを見せつけた。(当ブログ4月24日のエントリー「CLAMP、今夏の初訪米でVIP待遇?」参照してください。)

そんなCLAMPを11月28日付ニューヨーク・タイムスが、日米両国で最も成功したマンガ家の中の一グループとして絵付きの記事で紹介している。

ニューヨーク・タイムスの記事→「様々なスタイルでファンを魅了する4人の女性マンガ家たち(Four Mothers of Manga Gain American Fans With Expertise in aVariety of Visual Styles)」。(←もしかしたら読むのに登録が必要)

以下はニューヨーク・タイムスの記事の要約。記事を書いているのは、過去にもこのニューヨーク・タイムスやロスアンジェルス・タイムスでアニメ・マンガ関連の記事を書いたチャールズ・ソロモン氏。

CLAMP」という名前は西洋人の耳には奇妙に響くかもしれないし、聞きなれないものかもしれない。しかし4人の女性からなるこのグループは、日本そしてアメリカで最も成功したマンガ家のリストに入るだろう。過去17年間、この女性たち――いがらし五月、大川緋芭猫井椿、もこな――は人気のマンガシリーズを22作品も生み出してきた。『X』『ちょびっツ』『カードキャプターさくら』を含むその多くがアニメ化され、アメリカでもDVDで見ることができる。

CLAMPは、アメリカでの過去数年の急激なマンガ人気を語る際に欠かせない存在です」メールでのインタビューでそう語るのはランダム・ハウスのマンガ部門であるDel Rey社の共同発行人であるダラス・ミダウ氏。「彼女たちの流麗でドラマティックな絵と、ストーリーの語り口は男女問わずマンガ読者の共感を得ています」
Tsubasa 11: RESERVoir CHRoNiCLE (Tsubasa Reservoir Chronicle)
アメリカでは『ツバサ』の売上が100万を超え、Del Rey社では来月『ツバサ』の「キャラクターガイド」本を出版する。ヒューストンを拠点とするFUNimation Entertainment*1は、アメリカで来年初頭に『ツバサ』を原作とするアニメ(52話)*2DVDを発売すると最近発表した。

CLAMPは自分たちの作品について語る時、4人全員で話し合い、それから多くの場合大川氏が皆の意見を代弁する広報となる。

インタビューで大川氏が通訳を通して語ったところによると、最初CLAMPは美術を専攻する学生11人による同人誌製作グループとして始まった。CLAMPという名前を誰がつけたのか誰も覚えていないとのことだが、その名前は、グループがプロとなった4人だけになってもそのまま残った。

CLAMPアメリカでの人気を喜びながらも、同時に驚いているようだ。「あるシリーズでは、海外の読者のことも念頭において描いています」大川氏は語った。「でも思うんです。アメリカの女の子たちがわたしたちのマンガを読む時、ストーリーはちゃんと心に響くだろうか、キャラクターに感情移入できるだろうか、って」
Chobits Vol.1
一つのジャンルのマンガを描くマンガ家が多い業界で、CLAMPは様々な種類の作品を発表している。SFコメディ『ちょびっツ』はギークっぽい学生と気味の悪いほど可愛いアンドロイドとの上手くいかない恋愛の物語で、『xxxHOLIC』はある能力を持つ高校生四月一日(わたぬき)がどんな願いもかなえる侑子の店に通うことになる話。そして最も愛されている作品『カードキャプターさくら』は、魔法のカードを開放してしまった小学4年生の女の子が、カードが問題を起こす前に回収しようとする物語である。
Cardcaptor Sakura 1 (Cardcaptor Sakura Authentic Manga)
人気シリーズ『美少女戦士セーラームーン』の変身するティーンエイジャー・月野うさぎ(英語名セリーナ)がちょっと間の抜けたところがあったのに対して、桜は温厚で決して泣き言を言わず、超自然的な経験を通して学び成長していく。桜の親友・知世は桜のために可愛いコスチュームを作る。

「『セーラームーン』のように少女マンガではキャラクターたちが変身するのはよくあります。わたしも変身を『さくら』に取り入れたいと思っていました」と大川氏。「でもたいていみんな同じコスチュームを着ています。そこでそれをちょっと変えてみました。女の子がいつも同じ服を着ているのはとっても寂しいですよね。」
xxxHOLiC
CLAMPのマンガはその絵のスタイルでも際立っている。『xxxHOLIC』の官能的な魔女・侑子は木版画から抜け出したかのようであり、ダーク・ファンタジー『X』の細身で中性的なヒーロー・神威がアドバイスを求める丁(ひのと)姫の髪の流れは、ミュシャの絵を思わせるアールヌーボー風にうずをまく。
xxxHOLIC』の黒と濃い影の多用は、『さくら』の素直な線とはっきりしたコントラストを成している。

大川氏は自らの役割を映画のプロデューサー&監督と比べて説明した。「監督が俳優を選ぶように、わたしがキャラクターを描くの誰か、そしてそのキャラクターをどう動かすのかを決めます。ホラー、コメディなど、そのシリーズのジャンルに合わせて役割をふるのです。そして絵のスタイルも決めます。『xxxHOLIC』で言えば、木版画の浮世絵からとりました。」
X/1999, Volume 2: Overture

「そうは言っても、みんながわたしの指示に満足しているかはわかりませんが」大川氏はそう言って笑った。

日本とアメリカで人気のある多くの作品が女性によって描かれている。高橋留美子(『らんま1/2』『犬夜叉』)、荒川弘(『鋼の錬金術師』)、そしてCLAMP。たくさんのヒットを飛ばしたことで、CLAMPはマンガ家として好きなものを描けるようになった。

「ここ何年かでアニメ業界に女性の監督が増えてきたのは事実ですが、より多くの女性がマンガで自分の作品を発表しています。マンガは自分を自由に表現できる方法なのです。マンガでは強い女性が登場することも珍しくなくなってきました。『セーラームーン』はたぶん一番有名な例でしょう。でも日本の女性が実際に強くなっているのかはわかりません。私たち自身はとてもユニークなポジションにいると思っています。CLAMPは出版社に対して自分たちの描きたいことを発表する、そして許可を得て仕事に取り掛かります。」

CLAMPは日米のマンガまたはグラフィックノベルの違い、そしてどんどん広がる日米間のポップカルチャーの交流について熱心に語ってくれた。

「日本では、一つのシリーズが終わるまでマンガ家は変わりません。もしそのマンガ家が死んでしまったら、そのマンガは終わります。一人のマンガ家がその作品を描くからです。」と大川氏。「でもアメリカではいくつかのチームがいくつかの『Xメン』のシリーズを描いています。」

「日本でアメリカのコミックスを見つけるのは以前は大変でした。でも大きな書店では見つけ易くなってきています。日本のマンガ家として、アメリカの作品にはとても興味がありますし、お互いに影響しあっていると考えています。」

↓来月発売される英語版『ツバサ キャラクターガイド』本。

Tsubasa Character Guide

Tsubasa Character Guide

*1:訳者註:FUnimation Entertainmentの拠点は本当はフォートワースらしい。

*2:訳者註:『ツバサ』は全52話ではないので、今回発売されるアニメは52話までなのかもしれない。